正義=真剣に顧客に向き合う勇気

 企業は、絶えず、時代に合うように自分を変えていかなければなりません。

 もし、消費者に飽きられそうになったら、あるいはその気配を感じたら、どうして飽きられそうなのか真剣に考えなければなりません。そっぽを向かれてしまったらおしまいです。不況の中、最近まで驚異的な売り上げを誇ったあの「ユニクロ」が今、その憂き目にあっています。

 今の消費者は何を求めているのか、いつも目配りしていなければなりません。あるいは消費者自身が何を求めているのか気がついてないかもしれませんので、企業の方で先回りして、消費者のかかえる問題を解決する商品を開発してあげることも重要です。

 現代のように多品種少量生産の時代においては、企業は絶えず消費者の動向を探りながら、あるいは、心理を推測しながら、商品やサービスの企画を続けなければ、他のライバル企業に引き離され、生き残ることは難しいでしょう。

 花王は、65年前から「消費者相談センター」を設置しています。

 相談センターに届く苦情や意見は年間10万件にものぼるそうです。それらの一つ一つに社員が丁寧に応対しています。必要とみれば苦情が寄せられた家庭に出向いてまで、問題の根底にある原因を徹底的に突き止めようとします。メールよりも生の声の方がより多くの情報量が含まれているとし、できるだけ消費者の生の声を聞くようにしているそうです。なかには、怒鳴り込んでくるお客さんもいらっしゃるそうですが、丁寧に応対し、その応対記録を文字で残して済ましてしまうと、お客さんの怒りや気持ちが社内に伝わらないので、わざわざ音声をテープにとって残すそうです。これまで寄せられた消費者の苦情が商品の改良や新しい企画に役立ってきました。だから、真剣にお客さんと向き合い、そして、生の声を「宝」にして、次の商品開発に活かしているそうです。

 お客さんの声がそのまま貴重な情報として社内で共有される「ナレッジマネジメントシステム」が確立しているようです。

 「消費者を欺かない」、「消費者の声を大事にする」、いずれも企業の正義であり、今の時代にこれが実現できない企業は、一時的に利益を上げることはあっても、必ず内部から崩壊し、社会から糾弾されることは、雪印をはじめ多くの事件で実証されています。

 目先の利益を第一に考え、産地偽装、強引な勧誘などあくどい手を使う企業は後を断ちませんが、これらの企業で働いている従業員のことを思うとかわいそうです。世の中それほど悪党ばかりいるわけではありません。社会正義が根付いていない企業の中で自分をだましながら働くほどつらいものはないでしょう。どんなに力があるリーダーが率いようとも、正義のない集団は、やがて内部告発や離反により崩壊していきます。

 正義が存在しなければ、リーダーシップがいかに優れていようが、従業員はついてきてくれません。正義にもいろいろありますが、企業は第一に社会にとっての正義をめざさなけれならないと思います。

 ただ、いくら正義だからといって、利益度外視の低価格で商品を売り続けるわけにはいきません。企業は、消費者だけでなく、従業員や株主、国家にも利益を配分しないといけないし、環境問題にも気を配らないといけないからです。

 この世の中で採算性を維持しながら、しかも社会正義を貫くために決め手となるのは、知識を集結した経営(=ナレッジマネジメント)とあなたのリーダーシップです。

 簡単に経営資源、経営知識を手に入れるのは困難です。今、手にしている経営資源、経営知識をじっくり見つめ直してください。それを一つ一つ洗い出し、できれば紙に書き出すなどして整理されてみるといいでしょう。それは、優秀な仲間かもしれません。あるいは、技能かもしれない。これまでの取引先、人脈かもしれない。それらを思いつく限り、紙に書き出すのです。まずは「己を知る」作業が必要です。

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敵を知り、己を知れば百戦危うからず
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 次に必要なのは、現在の「経営資源」、「経営知識」から、あなたの企業にとって何が「核」となるものなのか、これなら誰にも負けないという「核」を見つけだす作業です。

 あれも、これもと手を広げすぎたら必ず失敗します。これだけは負けないと思われる「核」を見つけだし、次に、この「核」に対し、力を集中するのです。
もう一つ「花王」の経営理念に次のようなものもありました。

 次に、進むべき道を設定することになるのですが、これを間違えると、あとでいくらがんばっても、取り返しのつかないことになります。氷山に衝突しそうになっているタイタニック号の甲板をごしごし洗うのと同じくらい的外れなことになってしまうかもしれません。つまり「企業ドメイン」でしっかり方向づけを行わないと、後でいくら努力しても、間違った方向に進んでしまい、傷口を広げるだけの結果になるおそれがあるからです。
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