未来の扉=コア・コンピタンス経営

 もし、あなたと仲間の描く未来の夢が一致し、その実現に向かって一緒に走り始めることができたら、あなたのめざす夢の実現性は確実に向上したといってよいでしょう。その夢がどんなに果てしなく遠くに見えようとも、その夢が叶うときにもたらす社会への貢献度とあなた方へ返ってくる賞賛の嵐を思い浮かべたら、自然と心は奮い立ち、目標に向かってみんなが邁進するに違いありません。

 例えば、日本ビクターによほどの決意がなければ、20年間もがまんして、なかなか日の眼を見ないVTRの開発を続けたりはしなかったでしょう。これまで放送時間中でしか番組を観ることはできなかった一般視聴者が、もし、放映時間以外に自分の好きな番組を好きな時間に観ることができたらどんなに便利だろう、また、好きな番組を自分の所有物のように保管して、何度も繰り返して観ることができたらどんなに幸せだろうと、開発者たちは想像しました。その夢が叶ったときの消費者が喜ぶ顔を想像しながら、日本ビクターの社員たちは一生懸命取り組んだに違いありません。

 アップル社は、人間の感情とは対極にあるコンピュータを、人間の気ままな操作で思い通りの働きをさせることはできないか、試行錯誤しながらパソコンの開発に取り組み、その結果、他のどのメーカーよりもユーザインターフェースに優れたパソコンの開発に成功しました。

 彼らは人と機械のインターフェースを追求することに、夢をかけました。苦労も絶えなかったでしょうが、それ以上に、コンピュータを人々の暮らしの中にとけ込ませるために、あるいは生活に欠かせないグッズとして広めるために、強い目的意識をもってプロジェクトを進め、成功に導くことができたのです。

 ヘンリー・フォードは20世紀初めに自動車の設計・製造で成功を収めました。その後、フォード社は、高級車路線を進むか大衆車路線を押し進めるか大きな岐路に立たされ、会社幹部も二手に分かれ激論を交わしました。当時、高価格車市場は伸び盛りで、利幅も大きいし、フォードとともに会社創立から片腕として支えた古参幹部も高価格車路線を推しました。ヘンリー・フォードは迷いに迷ったあげく大衆路線を選びました。一部の富裕層ではなく、米国全土の一般的な農家の各家庭に車が一台づつ行き渡る壮大な夢には勝てませんでした。

 ヘンリー・フォードは大量の製品を迅速にかつ効率よく生産できるように、標準化と移動組み立てラインの導入を図りました。

 これまでは、自動車の周りを労働者が移動しながら組み立てていく方式がとられていましたが、人は動かず、部品の方からベルトに載ってやってくる移動組立ラインを採用しました。これは、「フォードシステム」と呼ばれ、後に大量生産方式の代名詞に使われるようになりました。フォードが、もし、近視眼的な見方しかできず高級路線を選んでいたら、これほどの成功は収められなかったでしょうし、下手をすると自動車業界から消え去っていたかもしれません。

コア・コンピタンス経営
―大競争時代を勝ち抜く戦略


  日本経済新聞社
      1,942円
レビュー

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 「今日のビジネスで勝者になるということは、ナンバーワンになることとは違う。誰が“最初に未来にたどり着くか”というのがポイントである」
   経営コンサルタントのゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードはそう語る。本書で2人は、自社の未来を創出し、新しい市場を予測し、そして会社に再投資することを企業に勧めている。

   ハメルとプラハラードは、従来のやり方に甘んじて向上を求めない経営者は自分の会社が衰退していくのを目にするはめになる、と警告している。例に挙げられているのが、70年代に起こったIBMとアップル社の戦い。メインフレーム・コンピュータのトップメーカーとして確固たる地位を築いていたIBMは、パーソナル・コンピュータの可能性を見過ごしてしまった。そのおかげで、扉はアップル社に開かれた。同社は、すべての男性、女性、子どもためのコンピュータという未来を描いていたのだ。

 「最悪の場合、動きののろい者は一番よく知っている道をなぞる。一方挑戦者は、それがどこに通じることになろうと、一番可能性のある道を歩む」と著者は言う。ビジネスリーダーというのは、やれ予算削減だの効率化だのリエンジニアリングだのといった使い古された戦術に気を配る「メンテナンス技師」でいるだけではだめだと2人は説く。

   本書は、決して素人評論家のために書かれたものではない。自分の会社をトップクラスに育てようと真剣に取り組んでいる経営者に向けた本なのだ。

コア・コンピタンス経営
−未来への競争戦略

 日本経済新聞社
      800円
レビュー

内容(「BOOK」データベースより)
リストラやリエンジニアリングでは、21世紀の競争に勝ち残れない。10年後の顧客や業界の姿をイメージし、自社ならではの「中核企業力」(コア・コンピタンス)を強化して未来市場の主導権を握れ!日米で話題を独占したベストセラー、待望の文庫化。
 これまで、大きな成功を収めてきた企業は、今ある資源を活用して何ができるかと考えるのではなく、自分の力は一応棚に上げて、未来の顧客のニーズを先に予測する作業から先に取りかかっています。そして、方針が決まると、それが現実とのギャップが大きいほど、わくわくしながら仕事にとりかかっています。このように、背伸びをした目標をかかげて取りかかることを「ストレッチ戦略」と呼んでいます。

 次に、足らない資源が何であるかはっきりしたら、総力を上げてその足りない資源の獲得に向けて走り出さなければなりません。そして、他の企業にはない、その会社の独自能力「コアコンピタンス」を築いていかなければなりません。従来からの貴重な資源と、その後がんばって獲得した資源を合わせて最大限に活かさなければなりません。少ない資源を目一杯活用することを「レバレッジ戦略」といいます。

 足りない資源は高価であったり、稀少であったりして、簡単に手に入らない場合があります。必ずしも購入する必要はなく、その資源を持っている企業を買収する方法もあります。もちろん、そんな余裕はないでしょうから、企業連携を考える手もあります。ただ、連携するときは、相手方からノウハウを盗まれるだけで終わってしまうことがないよう利害をうまく調整し、できれば盗まれる以上に相手から技術やスキルを吸収するぐらいの気迫が必要です。
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