問題を発見する能力
 いつの時代にも、勉強ができる子と、できない子がいます。
 その違いは何でしょう。それは、与えられた問題に対して、出題者が意図する内容をよく理解して、出題者が答えて欲しいと思う解答を的確に答えてくれる子なのか、そうでない子なのかの違いによると思います。そこに至るまでには、もちろん勉強が必要ですが、できる子になるための勉強は、人間が生きていくために必要な勉強とは思えません。それは誰もが学校を卒業して社会に出て実感できることだと思います。

 学校で習う勉強は、「ワクチン型勉強」といえます。子どもたちは、はいろんな環境で生まれ育ち、言葉を覚え、遊びを経験して小学校に入学しますので、同じ様な背丈や顔つきであっても、一人の子の中にできあがった既成観念はほかのどの子とも、同じではなく、そのばらつき度も大きいといえるでしょう。学校は、「国語」で漢字の書き順を教えます。子供たちは漢字に書き順があることを知ります。「算数」で三角形の定義を教えます。子供たちは三角形の一辺が少しでも曲がっていたり、辺と辺がくっついていなかったら三角形と呼べないことを知ります。

 これらの法則を覚えたら今度はテストです。今まで習ったいろいろな法則を理解した子が好成績をおさめます。はじめは既成観念に邪魔されて、おかしな解答をしてしまいますが、一つひとつ間違いのパターンを学習し、徐々に、学校の先生が教えたいルールに慣れてきます。その環境に早く順応することが学校の成績を上げるための一番の早道といえるでしょう。つまり、間違いを経験することで、次はその間違いを繰り返さないようにする勉強の方法を「ワクチン型勉強」と呼ぶのです。

 東大を卒業したのに一般企業で使い物のならない企業戦士が星の数ほどいることを皆さんご存じですか。たぶん彼らは「ワクチン学習」の成果だけで入学試験や入社試験をくぐり抜けて者たちで、社会人となっても、上司から「問題」を与えられない限り、自分で物事を考えることができなくなっているのです。もともと創造力の貧困な官庁であれば入庁しても目立たなかったかもしれません。しかし、一般企業において致命的としか言いようがなく、採用した会社にとっても、採用された本人にとっても悲劇としか言いようがなく、日本の教育構造が生む問題点といってよいでしょう。

 でも、東大卒業生に限らず、普通の人でも「ワクチン型勉強」に偏ったために苦労している人は多いと思います。日々の暮らしや仕事において、様々な問題の処理に当たっていることと思われますが、元から与えられた問題に当たるうちはいいのですが、例えば、地域で無理やり役員にさせられ会報のあいさつ文を書かせられたりイベントの企画をしなければならなくなったとき、あるいは職場で自由な発想で企画書や論文を書きなさいなどと命令されたとき、ほとんどの人がとまどい、何から手をつけていいのかわからなくなると思います。

 「ワクチン型勉強」とは対極にあるのが「問題発見型勉強」です。 教育界はもっと「問題発見型勉強」に力を入れるべきです。もちろん教育界でも、そのことに気づいていて、いろいろな教育改革を試みてはいるみたいですが、悲しいかな、教える側も「ワクチン型勉強」で学習してきたため、うまく機能することができないようです。

 「問題発見型勉強」の例をあげます。子どもが最初に経験するのは夏休みの課題研究です。自分で自由に研究テーマをみつけて、その研究を通して、わからないことは文献に当たったり親から聞いたりしながら、問題点を見つけたり、一定の法則性を見つけたりするもので、皆さんも経験したことがあると思います。親になっても、子どもの課題研究を手伝わさせられ二度経験している人もいるかもしれません。はじめから問題集を与えられる勉強と違って、課題研究については、テーマを決める最初の段階から、かなり苦労されたことと思います。次に経験するのは、大学の卒業論文ではないでしょうか。これも自分でテーマを決めて取り組まなければなりません。すべて、他人のまねや出来合のもので済ませるというのであれば論外ですが、少なくとも、テーマをしぼるだけでも相当の努力をしたことと思います。しかし、いったん軌道に乗ると、自分で決めたテーマを追いながら、今までの勉強では味わったことがないほど脳が活性化し、生き生きと研究テーマに取り組めた経験をお持ちではありませんか。

 「問題発見型勉強」は、これまでの勉強と違って、主体性を持って取り組まないと先に進むことはできません。自分で問題を発見しようとするとき、今までの受け身の学習と違って、今あなたの脳内に蓄積されたいろいろな情報網に信号を送り、記憶(情報)と記憶(情報)をネットワークでつながなければいけません。脳の中のたくさんのスイッチがONになり、意識が覚醒され、また、これをつなぎ変えたりすることで、さらに新しい発想を得たり、これまでに味わったことがないような興奮を伴いながら、作業が長時間でも疲れることなく、新たな知識も驚くほど効率よく脳に吸収されていくのです。

 「ワクチン型勉強」の動機は、他人よりも良い成績を取ることにあったと思います。自分が大人になったところで何の役に立つのかわからないような内容を無理やり覚えるのですから、真からの探求心に基づき勉強していた人は少ないのではないでしょうか。

 「問題発見型勉強」の動機は、他人より良い成績ととるためでも、親を喜ばすためでもない、まさに、自分のため、自己実現を図るために取りかかるケースが多いようです。

 企業だけでなく、現代のように右肩上がりの景気の上昇が望めない時代にあって、社会が求める人材は、問題を発見する能力を有した者であることは、前回でもお話をしました。

 それでは、「問題発見型」の能力はどうして身につけることができるのでしょうか。残念ながら近道はありません。課題研究に取り組んだり、論文を多く書くことで、自分の中にメタ認識をつくっていくほか手はないと思います。はじめは、それに取りかかるまでに驚くほどのエネルギーを要します。誰もがはじめは同じように苦しい思いをすることでしょう。苦しい思いをするのは、ちゃんと教育してこなかった学校あるいは文部科学省のせいです。ここは、とにかく努力を惜しまず何度も何度も繰り返してください。そのうち、脳内のスイッチの入れ方が上手になっていきます。少しのエネルギーで問題の発見や課題の設定が上手にできるようになります。そこまでいけば、今までの自分とは驚くほど違う自分を発見することができるはずです。
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