「ナレッジマネジメント」を超える「知識経営」とは
 日本ビクターが、家庭用ビデオの市場でVHSというデファクト・スタンダード(事実上の世界標準)を創りあげた話は有名です。
 デファクトスタンダード 国際機関や標準化団体による公的な標準ではなく、市場の実勢によって事実上の標準とみなされるようになった「業界標準」の規格・製品のこと。
 成功の一番の原因となった「知識」は、これまで業務用ビデオで培った技術でした。

 家庭用ビデオとして使えるようにするため、業務用ビデオをコンパクト、かつ、長時間録画ができるように改良することが絶対条件であり、日本ビクター横浜工場スタッフに与えられた至上命題でした。

 スタッフの中から選ばれた4人のプロジェクトチームは、これまでの「知識」を結集して開発にあたりました。彼らは、参考になるマニュアル、組立図、部品図、構成表等のデータをすべて持ち寄りました。ナレッジマネジメント(知識管理)を活かし、これらのデータを4人のプロジェクトチームを支えるスタッフ全員で共有できるよう、適切に管理されました。
「知識」には、目に見える
  「形式知」・・・ドキュメント、マニュアル、設計図等 と
  「暗黙知」・・・体で覚えた技術、直感、美観等

の二つがあります。

 「知識経営」とは、複数の社員が、「形式知」だけでなく「暗黙知」をも共有し、イノベーションあるいは経営改革などに関与し、会社を発展させるマネジメント手法をいいます。
 「知識経営」とは、複数の社員が、「形式知」だけでなく「暗黙知」をも共有し、イノベーションあるいは経営改革などに関与し、会社を発展させるマネジメント手法をいいます。

 日本コロンビアが秘かに開発していた家庭用ビデオが日の目を見るための条件は、長時間かつ安定速度での録画維持でした。
 このため、テープを送るリール部分の開発に、かなりの精力が費やされました。
 このとき、メンバーは、言葉で意志を伝え合いながら、開発にあたっていたこと
でしょうが、果たして、言葉(=形式知)だけで問題解決を図れたでしょうか。

 複数の人々の協力によるこれまでのイノベーションは、言葉を超える暗黙知が、
協力者のなかで渦となり、お互いがおそらく興奮を伴いながらそれを理解し、
渦の中から、原理、原則(=形式知)を取り出し、成果に結びつけてきたのでは
ないのでしょうか。

 彼らは、長い協力関係の中で、お互いの暗黙知を、何度も何度も言葉を交わしながら
自分の暗黙知として受け入れられるようになるまで、繰り返し、誤解を解消し、軌道を修正し、言葉にならない概念であっても共通認識ができるに至るまで、調整してきたからこそ、そのような離れ業をやってのけたとも言えるでしょう。
 よそ者には、到底入り込む隙のない独自のネットワークが構成されていたに違いありません。

 日本ビクター横浜工場は、「知識」を共有し、新たな「知識」を生み出す「場」をつくり、維持することができたからこそ、本物の「知識経営」を実践することができたのだと思います。
知識経営のすすめ
ナレッジマネジメントとその時代 
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紺野 登 (著)
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