歴史人物にみるリーダーシップ
 紀元前3世紀末、秦の始皇帝亡き後、天下は乱れ、中国各地で反乱が起きます。
 司馬遼太郎の歴史小説「項羽と劉邦」は、この時代に登場した劉邦と項羽にスポットをあて、それぞれを主役に生い立ちから、勢力拡大、両雄の邂逅、そして敵対、幾たびの戦争を、主役を交代させながらオムニバス形式で展開
させていきます。

 項羽は、素性もよく、頭もよく、腕力もあり三拍子揃った英雄でした。
 項羽は、その比類なき腕力と才覚で、戦を勝ち進み順調に勢力を拡大させていきます。

 リーダーとしての実力も風格もある項羽に対し、部下は畏れ従い、よく項羽のために働きました。
 現代人の多くが、もし自分も成れるなら項羽のような人物に成りたいと思うほど彼は理想のリーダー像を具現しているのかもしれません。

 劉邦は、名もない農民の出で、時々、よその町で泥棒も働くごろつきでしたが、類のない可愛気がある男で、仲間に慕われていました。

 劉邦は、自分にない才能のある者を招きいれては師と仰ぎ、素直に教えを請いましました。その素直ぶりが、また可愛げがあって、皆は進んで劉邦にアドバイスしようと、彼のもとに集まりました。
項羽と劉邦 (上巻)新潮文庫
 項羽と劉邦は、幾たびか戦を交えるのですが、戦うたびに項羽が勝ち、劉邦はそのたび、戦場か命からがら逃げるしかありませんでした。それでも部下は、劉邦を見捨てませんでした。

 劉邦が最後の一戦で項羽に打ち勝つのですが、それが有名な垓下(がいか)の戦いと呼ばれるものです。「四面楚歌」という有名な故事はこの時、生まれました。

 劉邦の軍に囲まれ、たった一度の敗戦で、項羽は、最愛の虞姫(ぐき:虞美人)とともに命を落とすことになります。
 こうして、劉邦は漢帝国の始祖にまで昇りつめることになるのですが、司馬遼太郎「項羽と劉邦」で、二人のリーダーシップの型をうまく引き出しがら、物語に深みを与えることに成功しています。
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 劉邦は雄弁ではありません。どちらかというと、朴訥とした感じで、それでも情熱が表情に出やすく、それが人間的な魅力として映り、裏表のない
人柄に誰からも好かれ、自然と彼の周りに人が集まってきます。
 「彼のために、良いことを教えてあげたい」、
 「忠告したい」、
 「彼を喜ばせてあげたい」
と思わせてしまう魅力が彼にはあります。

 でも、それだけの人なら、世の中に五万といると言われそうですね。さらに付け加えるとすれば、「正義」でしょうか。「人の道」といってもいいかもしれない。事業あるいは金儲けにも立派な「正義」、「人の道」はあると思います。これまでの大企業の祖といわれている人たちをみれば、誰一人その道を外した人はいないと思います。

 つまり、人心掌握上のテクニックのようなうわべだけでない人間的魅力と、借り物や飾り物でない「正義」を合わせもっていたら、これ以上の強みはないといえるでしょう。
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