リーダーシップの特性として基本の柱となるのは、「自信」と「決断力」と「社交性」の3つであると前回解説しました。

 人は皆、生まれつき特質を持っています。その特質は大きく「陽」と「陰」に分けることができます。「陽」である方が、楽観的なので「自信」があるように見えます。また、くよくしないので「決断」も早いでしょう。おまけに社交的です。

 だから「陰」より「陽」の方がリーダーに向いているとか、生まれつき「陽」は得だという考え方は、一見当たり前のようにも見えますが、決してそうとばかりは言い切れません。なぜなら、「陰」を知らない「陽」は、「陰」の気持ちがわかりませんから、人の心の機微に鈍感だったりします。逆に、本質は「陰」なのに努力して「陽」を獲得することができた人は、「陽」でありながら、「陰」も知ってる独特の味わいのようなものがあります。人の心の痛みにも敏感です。つまり、「陽」になろうとする努力がその人の味わいのようなものをかもし出し魅力的に見せるのかもしれません。ただ、性急に「陽」になろうと無理をすると、精神にかなりの負担をかけますので、ゆっくりと自分を変えていくのがいいでしょう。

 やがて、あなたは「自信」と「決断力」と「社交性」を獲得し、リーダーの条件を備えたとします。実は、まだ足りないものがあります。
 一昔前までなら、これだけで十分であり、どこに出しても恥ずかしくない立派なリーダーでした。高度成長期においては、ヒエラルヒー(階層性)は、効率よく組織を運営していくための必須条件でした。高度成長期には、一つの製品を長いことバージョンアップしなくても飽きられることはなく、需要が途切れることはありませんでした。経営トップは、いかに効率よく、小さな経費で大きな利益を生み出すかだけを考えていればよかったのです。いくら大量生産だからといって、機械ばかりに頼むわけにはいきませんので、最後は「人」に行き着きます。いかに「人」のやる気を引き出し、人間関係を良好に保ち、統率していくか、それぞれの部署を管理する班長、その班長を束ねて管理する課長、それらの課長を統括する事業部長、全体を統括するトップリーダー・・・と、縦に長いヒエラルヒーの中で、それぞれの立場でリーダーシップが必要とされたのです。

 しかし、高度成長期は終焉を迎え、同一製品を大量に生産しても売れない時代がやってきます。消費者は飽きっぽく、それぞれ価値観が違い、イメージやブランドを重視するようになりました。つまり、安い製品を大量につくっていればよい時代は終わったのです。大量生産は、徹底した分業により効率を上げることで成立する手法です。そのため、分業が進んでいった結果、班員は、自分の班に与えられた使命だけを果たせればよく、極端なことをいえば、自分の部署が全体からすると、どういう立場に置かれ、どのように貢献すべきかなど考える必要もありませんでした。官僚組織はヒエラルヒーの代表といえます。官庁の中で横行する縦割り主義や、手段の目的化は役所の専売特許です。

 例えば、何のための事業なのか、あるいはイベントなのかなど、立ち止まって考えることは滅多になく、ただただ見栄えをよくするために不要な金をつぎ込んだり住民や職員に動員をかけたります。しかし、多品種少量生産の低成長時代にあっては、少なくとも民間は、縦に長いヒエラルヒーでは太刀打ちできなくなっています。組織変革を怠った企業は「大企業病」に冒され崩壊していくしかありません。

陽気であればいいというものではない。

リーダーは、部下の心の機微を感じ取る繊細な心も併せ持たなければならない。
これからも生き延びようとする大企業は、多用な価値観に即応した商品開発ができるように、あるいは、トレンドの変化を素早く感じ取り、サービスに短時間で反映できるように、組織を押しつぶし、フラット型に変えていきました。

 業種によって異なりますが、組織において管理できる部下の数(統制範囲)には制限があります。そのため総従業員数が多いほど階層を上に積み上げていかなければなりませんので、組織はだんだん縦に長くなっていきます。これをフラットにするということは一人当たりの管理者が把握しなければならない部下の数が飛躍的に増大するということです。

 こうなっては、管理しようなどという思いは、きれいさっぱり捨て去ることです。もはやいつも管理されないといけない人間など、切り捨てるべきかもしれません。

 そこで、現代のリーダーシップに求められる新たな特性について考えてみましょう。皆さんの職場でもリーダー像が一昔前と少し変わってきていると感じたことはありませんか。これまでは、人間を統率するための権威がものをいう時代でしたが、現代のように状況の変化が早い時代にあっては、権威の上にあぐらをかいているような上司は次第に疎んじられ、その代わりに時代の流れに敏感で自らも有益な情報を発信する者は上司であれ同僚であれ、皆の注目を集め、階層の枠を超えてリーダーとして活躍するようになってきています。つまり、リーダーシップの特性である「自信」、「決断力」、「社交性」のほかに、新たに「情報力」が加わったのです。

 これからの低成長時代には、情報に対して鋭い感性を持ち、情報機器を駆使できるだけでなく、情報が自然と集まってくるような人的ネットワークをいくつも持ち、集められた膨大な情報の中から、企業の利益に貢献する新たな価値を生み出すような力、すなわち「情報力」を備えたリーダーシップが必要とされるのです。
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目次

[1]コーチングとは何か
[2]GROWモデルで学ぶコーチングの基本
[3]コーチングのスキルを身につける
[4]部下のタイプ別に見るコーチング・スキル
[5]会話例で学ぶ実践コーチング
[6]さらなるスキル・アップに向けて

上司の哲学―部下に信頼される20の要諦(PHP文庫)

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目次

仕事の峠・人生の峠
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熱意を評価する
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