そこで、万人向けとはいきませんが、他のプレゼン参考書には書いていないとっておきの相手の興味を引きつけるテクニックについて伝授しましょう。プレゼンも今でこそパワーポイントなど優れたツールが開発され、形だけ見ると素人も玄人も見分けがつかいないくらいプレゼンらしい準備を整えることができるようになりましたが、ツールには「人間力」までは備わっていません。舞台に上がれば、あなたが主役なのです。 一人の人間が限られた制約の中で、最大限の効果を周囲にもたらすか、その人の「総合力」にかかっているのです。プレゼン本番であなたは舞台に上がります。そこには様々な制約があります。まず、制限時間があります。次に舞台装置の制約があります。ツールが優秀でも、映画やテレビのように場面が次々に切り替わるような表現の自由度はありません。どちらかというと、舞台装置が固定されている「演劇」に近いと思います。「演劇」は、映画やテレビのように場面が次から次に移動したり、時間が過去や現在を頻繁に行き来きすることはできません。演劇における作品の良し悪しは、観客と同じ時間と場所を共有しながら、限られた条件の中で、いかに観客の想像力をかき立て、ストーリーに引き込むかにかかっており、シナリオ作家や出演者達が演劇に魅力を感じるのはその点ではないかと思われます。 つまり、プレゼンテーションの準備をするとき、あなたは演劇の「シナリオ作家」になりきればいいのです。演劇における悪いシナリオは、時間や場所の制限が多いため、「説明的」になってしまうことです。物語の始まりから、物語の背景などくどくど聞かされたら、観客の心はすぐにでも離れてしまうでしょう。上手なシナリオは、「ストーリー」の中で説明とは感じさせないようにしながら上手に説明しているのです。 テレビドラマのように背景が次々に切り替わらないから、観客は、舞台俳優の一挙一動に引き込まれていきます。舞台に立てば、今度は作家でなく俳優になったつもりで聴衆に向かいましょう。言葉はコミュニケーションのほんの一部でしかなく、特に多くの聴衆を相手にしているときは、「言葉」以上のイメージが重要になってきます。あなたは俳優になって、観客の興味を一心に集めます。透明人間にでもならない限り、あなたは観客の目線から逃れることはできません。堂々と立ち向かうべきです。自分は透明人間にでもなったつもりで、滔々と事実だけを伝えればいいなどと考えているのなら、どんなに内容が充実していても多くの観客の心にあなたが伝えた内容を残しておくことはできないでしょう。 |
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| いいシナリオと役者が揃えば、百万言を費やさなくても、観客を「平和な国」にも「地獄の戦場」にも、あるいは「過去」でも「未来」でも、自由自在に導くことができるのです。 それでは「説明」的でない説明とは、どのようなものでしょうか。まず、切り口を大事にしなければなりません。聴衆が興味を持っていることから始めるのが常道でしょう。次に直接的な言い回しでなく比喩表現も有効です。本に書いているような一般論を滔々と述べても聴衆を眠らせるだけです。演劇のように、観客を夢の世界に連れて行くような演出が必要です。話の切り口や比喩は、一夜で集まるようようなものではありません。ライフワークのつもりで、いつもアンテナを張っておき、これは使えると思えば、手帳やノートにまめに記録するようにしましょう。 とっておきのネタや小話を上手にちりばめ、しかも本筋を外さず、「説明」したわけでないのに、説明あるいは説得してしまうような力を身につけてください。舞台のシナリオを書くつもりになると、プレゼンテーションの準備も楽しくなるのではないでしょうか。 |
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