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7月5日〜7月9日(毎日スキルアップ通信で紹介)
武士道―サムライはなぜ、これほど強い精神力をもてたのか?
新渡戸 稲造 (著), 奈良本 辰也
出版社: 三笠書房

 日本は学校で宗教教育を行わない。日本に住んでいれば当たり前のことだが、外国から見れば宗教教育の存在しない日本国は不思議でならない。「日本には道徳教育はないのか」と新渡戸稲造がある外国人から聞かれたとき、新渡戸氏は明確な答えができずに押し黙ってしまった。その後その問に改めて答える形でこの書物が著されることになった。新渡戸氏は文久2年(1862年)に南部藩士の子として生まれる。その頃はまだ江戸時代で、萩では幼少の吉田松陰が叔父玉木文之進から厳しい教育を受けていた頃だ。暑い夏の日に『論語』を読んでいた幼い松陰の額に一匹のハエがたかった。松陰は痒くてがまんできずに手で額をかいたところ、文之進から鉄拳が飛んできた。文之進曰く「読書のときに姿勢を崩すことを許せば学問を私利私欲のために為す人間に成り下がってしまう」といって怒るのである。おそらく新渡戸も武士の子としてそのような教育を受けたことだろう。外国人に「日本には道徳教育はないのか」と尋ねられ答えられなかったことについて新渡戸はずっと気に病み引っかかり、やがて自分の道徳心は武士道であることに気づく。この書物が名書であり得たのは、外国人向けに書かれた研究書であり、武士道が禅だけでなく旧約聖書と比べたりグローバルな視点から説明されているからである。当著はその英語版を歴史家奈良本氏が現代人にも分かりやすく和訳して紹介されたものである。

 武士道(ぶしどう)とともに外国語になった日本の代表的な文化、切腹(はらきり)について考察する。

 心臓が感情の中枢であるとするならば、腹部には交感神経中枢が存在し精神作用により強い刺激を受ける。つまり、腹には「精神」が宿るので日本人は腹を切る。切腹は、汚れがないことを人にわからせるための儀式典礼とみてよい。

 この書は外国人向けに書かれたものであることから、切腹が、西洋で忌み嫌われる単なる自殺ではなく、儀式であることを強調し、切腹の作法を詳しく解説する。幕末に西洋人を傷つけた罪で咎人(とがにん)となった武士の切腹の一部始終をリアルに解説している。咎人であるはずなのに、それは礼儀正しく、かつ鮮やかであり、細部にわたり、尊敬の念をもって記されている。ある学者は長い時間苦痛を味わいながら自殺する行為は必ず狂気、病的興奮が伴っていると解説しているが、新渡戸氏は切腹は狂気、病的興奮のひとかけらもなく、冷静に行われると学者を批判する。痛みを伴わない自殺は生きることからの忌避そのものであるが、痛みを伴いながら冷静に行う切腹は、積極的に生きることの裏返しではないかと新渡戸氏は説く。

   かくすればかくなるものと知りながら
   やむにやまれぬ大和魂


 吉田松陰が処刑前夜にしたためた歌である。

 武士道は系統だった学問ではない。思想でもない。端的に言えば生き方そのものである。法律のような成文法ではないが、武士の心に刻み込まれた掟のようなものである。

 武士道は知識のための知識を軽視した。知識は本来、目的でなく、知恵を得るための手段である、とした。目的を見失った知識人は、求めに応じて詩歌や格言をぽんぽん生み出す機械のようなものだと軽蔑した。

 武士は一般的に言葉が少ない。うそをつけない。あるいは「武士に二言はない」というように一度約束したら死んでも果たさなければならないと思うからだ。現代は目的を失った知識人ばかりであるし、うそも二言も何でもありの世界だ。おしゃべりができなければビジネスの世界を生き抜いていくことはできない。しかし、魂に触れる「言葉」を奥深く抱いている人は、最後の最後のところで、サムライのように踏ん張れるのではないだろうか。 


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「武士道」―サムライはなぜ、これほど強い精神力を持てたのか
        新渡戸 稲造 (著), 奈良本 辰也
       出版社: 三笠書房
目次

武士道とは何か
武士道の源をさぐる
「義」―武士道の光り輝く最高の支柱
「勇」―いかにして肚を練磨するか
「仁」―人の上に立つ条件とは何か
「礼」―人とともに喜び、人とともに泣けるか
「誠」―なぜ「武士に二言はない」のか?
「名誉」―苦痛と試練に耐えるために
「忠義」―人は何のために死


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