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カルロス・ゴーンが語る「5」つの革命
日本経済新聞社編集委員 長谷川洋三 講談社(2004.5.24発行)
  トップマネジメントの統率力で企業の運命は決まる。「カネボウ」は、経営陣が舵取りの失敗を隠蔽し権力の座に居座り続けようとした。三井住友銀行の指導を無視し、厳しい条件を提示してきた花王から統合先を投資ファンド「ユニゾン」に乗り換えようとした。「ユニゾン」の提示した条件は、統合後経営を改善したあとはキャピタルゲインを「ユニゾン」が獲得するかわりに、化粧品部門をまた経営陣の手元に戻すという虫のいい話であったからだ。結局は、花王にもユニゾンの手にも渡らず、カネボウの買収に「産業再生機構」が乗り出すことになる。

 UFJ銀行は、貸出先企業の査定をめぐる金融庁の調査で不利な資料を隠蔽した疑いを持たれた後、2004年には大幅赤字決算を出した。UFJは、住友信託銀行への信託部門の売却を表明したものの、約束を反故にして三菱東京への前面統合への道を選んだため住友信託銀行を慌てさせることになる。これらの逡巡も竹中平蔵財政・金融担当相が述べたようにガバナンス(企業統治)が機能していないことに起因するものである。

 好対照なのが、落ちるところまで落ちた日産の危機を明確なビジョンの元に立ち直らせたカルロス・ゴーンの力量である。2003年3月、都内のホテルで開かれた会合の席でカルロス・ゴーンはこう語った。

「日産の危機は財務が招いた危機ではありません。経営が招いた危機だったのです。」カルロスは、収支計算だけに目がいく非情なコスト・カッターではない。危機感を社員と共有し、日本人以上に社員たちと心を一つにして経営改革に取り組んできた結果、日産をV字回復に導くことができたのである。著書に付けられた副題「いかなる革命も人間中心でなければならない」が、筆者の主張したいテーマである。

 カルロス・ゴーンは経営改善を進めるに当たって社内で抵抗を受けなかったかという質問に対してこう答える。
「私にとって、反対されるということは、さほど問題にはしていない。なぜなら反対をするということは、それだけ会社再建に関心があり、エネルギーを持っていることがわかるからだ。一番の敵は、事態を何とも思わない人でした。」どこかの大企業のトップに聴かせたい言葉だ。

 カルロスは日産の代表になる20年前にも日本に来たことがあり、その時「コマツ」を見学して大変なショックを受ける。フランスではトップダウンのやり方が当たり前なのに、日本はボトムアップをとても大事にするということに感銘を受ける。カルロスはその体験から日産の代表に着任する前に、600人の社員と面談している。そこで長年の業績低迷でいらだちを感じている社員たちのエネルギーを感じ取る。彼らの思いをいかに経営に反映させてやるべきかとカルロスは考える。彼についてまわる「コストカッター」というイメージと実体はかなり異なるようだ。

 カルロス・ゴーンが日産の代表に着任する前に行った社員60名との面談から感じ取ったものは、「日産の社員はすべてバラバラで、みんなが混乱している」ということであった。長く続いた政権や大企業が崩壊寸前にみせる症状である。ビジョンも戦略も優先順位もなく、ただおろおろとするばかりだ。カルロスは思った。「混乱の原因が何なのか、問題を明らかにしてくれる人たちを自分のまわりに集める必要がある」と。

 カルロスは代表取締役に就任すると、日産の労組に面談を申し入れる。労組は危機感をしっかり感じ取っており、カルロスに「あなたが、建設的にことを進めていく限り、私たちは再建のプロセスに反対しません」と雇用維持のためには外国資本であっても歓迎すると答える。労組の強い関与で経営トップが右往左往したカネボウとはえらい違いである。

 カルロスは次に中間管理職でテーマごとにプロジェクトチームをつくる。
「新商品や新規サービス、新規マーケット開発」を考えるチーム、
「製造コストの低減」を考えるチーム、
「物流」、「研究開発」、「マーケティング」等々、それぞれのチームが研修会場で、赤、青、黄の付箋紙でボードを埋め尽くしながら、大議論を始める。

 カルロスは、フランスでは考えられない日本流の中間管理職からのボトムアップ方式を採用した。そこまでなら他の日本企業でもやっているが、日産が他と異なるのは、ボトムアップとともにカルロスの強力なトップダウンがうまくかみ合ったために、奇跡の復活を遂げることができたのである。


 日産の「リバイバルプラン」について検証する。

 1999年10月、日産は瀕死の状態から脱するため、カルロス・ゴーンを筆頭に、3年間で1兆円のコスト削減、有利子負債1兆4000億円の半減などの目標を掲げた「リバイバルプラン」を発表する。カルロスは、プランはコスト削減が中心と思われがちだが、新商品の開発にも重点的投資を行うことを強調した。米国で商品ラインアップを拡大するなど全世界でシェアの向上を図ると宣言する。

 1兆円のコスト削減は、その象徴ともいえる「村山工場の解体」など、プランに基づき、誰もが成し得なかった厳格なリストラがカルロスの強いリーダーシップのもとに執行される。

 はじめは工場の中の一部不採算生産ラインだけを止めようという提案もあったが、カルロスは「手術で切除すべき腫瘍に痛み止めを投与するようなもの」と取り合わず廃止を断行した。ただ、工場閉鎖に当たっては一人ひとりの対話を念入りに行い手厚い見返りの条件をそれぞれに提示し円滑に進めている。

 購買コストの劇的な切り下げにも躊躇しなかった。まず、部品や資材のサプライヤーの数を1145社から600社以下にまで削減することにした。1社当たりの購入量を多くしてあげると規模の経済が働き、納入単価が安くなるという理由からだ。

 研究開発についても力を入れる。選択と集中により、生み出した資源を惜しみなく新型車開発につぎこむ。

 日産リバイバルプラン発表から2年たった2001年10月、カルロスは進捗状況を発表する。それまでは3年はかかると見込んでいたプラン達成をわずか2年で達成できるという驚きの報告であった。そして、次の中期目標「日産180」を新たに披露する。




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カルロス・ゴーンが語る「5つ」の革命
日本経済新聞社編集委員 長谷川洋三 講談社(2004.5.24発行)
目次

<革命その1>
 第1章 経営革命――危機の原因はトップにある!
 第2章 “貧者同士の結婚”か? 最高の提携か?
 第3章 “燃えさかる甲板”からの脱出
<革命その2>
 第4章 ヒット車革命――創造的、大胆かつ情熱的なクルマをめざして
<革命その3>
 第5章 マーケティング革命――どこまで顧客の

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