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ディズニーランドはなぜお客様の心をつかんで離さないのか
芳中 晃 中経出版(2004.3.18発行)
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サービス業で成功する一番の条件はリピーターの獲得である。現代のように顧客の好みが多様化し薄利多売が機能しない時代にあっては、いかに顧客の心を掴み、繰り返し利用していただくか知恵を絞らないと厳しい競争のなかで生き残ることはできない。数あるテーマパーク経営の行き詰まりのなかで、ディズニーランドが生き残ってきたのには訳がある。ディズニーランドは、世の中がどんなに不況になっても、それに流されることがないよう「SCSE」という経営理念を掲げている。
S・・・safety(安全性)
C・・・courtesy(礼儀正しさ)
S・・・show(ショー)
E・・・efficiency(効率)
4つ目の「効率」は、企業にとっての効率でなく、お客様が、できるだけ多くのアトラクションなどのエンターテイメントを楽しんでいただくための効率性である。
ディズニーランドの従業員、アルバイトに至るまで、理念SCSEは骨の髄まで染み渡っている。誤って、顧客の膝の上にスープをかけたとしよう。普通ならウエイトレスのみならずマネージャーまで蒼白になるところだが、ディズニーランドではアルバイトであっても、このようなときは理念SCSEに立ち返り、あわてず対応できるので、顧客に必要以上の不快を感じさせることもない。 |
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ファミリーレストランでこちらが頼んだ注文をウエイトレスさんが最後に復唱する「サービス」は常々不用だと思っていたが、著者も同じ意見をこの本で書かれていて胸のすく思いがした。こちらは、注文を頼んだ後はリラックスしたいと思っているのに、ウエイトレスさんの復唱が終わるまでは間違いがあってはならないと緊張して聞かなければならない。もし違うメニューを持ってきたとき反論でもしたら、あのときの復唱を聞いていなかったのですかと反論されると思うからだ。注文の復唱は必要ないと思っていたが、筆者も同様の主旨で日本は不思議な「サービス」が多いと嘆く。
ホテルや料理店で否応なしにとられるサービス料も、おかしな話である。お客がサービスを受けたと心から思うときにチップとして払うのがサービス料でないかと筆者は説く。サービスはモノではない。視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚の五感に訴えるものでなければならない。日本のサービス業はレベルが低いと言われている。ディズニーランドは本物のサービスを提供して今日の礎を築いた。
日本のプロジェクトはほとんどがハードが先にありて後でソフトを考える式で造っているので失敗する。ディベロッパーが全国の土地を探して、ちょうど手頃の未利用の工業団地を見つける。不況で入居者がいないため地方公共団体が安くて手放すという。税金も安くするし、資金も都合をつけるといってる。いわゆるおんぶにだっこで、先に土地を買って、それから、遊具施設は何にするか、ホテルは何処に立てるかなどを考える。つまり、ハードが先にあって後から、そこをとりあえず購入して後から何をするか考えるというようなことをやっている。しかし、ディズニーランドは違う。はじめは、まったくのゼロから生身の人間たちが、いろいろアイデアを出し合って未来や夢を語るところからソフトづくりが始まるのである。ディズニーシーにある「インディー・ジョーンズ」はソフトの構築に10年をかけたという。ソフトを先につくって、それから基本設計にはいるのである。ソフトをつくる段階で徹底的に分析する。たとえば、レストランひとつつくるにも、
1 水はフィルターを通すのか
2 原材料の冷凍、冷蔵の比率はどうするか
3 納品サイクルはどうするか
等々、細かく問題をみずから提示し1つずつ解決策を導き出す。つまりKJ法ですべての問題点や関心事を洗いざらいにして、ソフトを企画していくのである。 ディズニーでは、客は「ゲスト」、従業員は「キャスト」と呼ぶ。客も従業員も非日常の世界で繰り広げられるショー出演者であり、傍観者ではないという考え方にたっている。日常とかけ離れた舞台の上で、従業員も日々抱える悩みなどは忘れて、夢の世界への参加に没頭すれば、ゲストにもその雰囲気が伝わり、楽しい気持ちが自然に湧きでるのではないだろうか。キャストは入場してくるゲストに「いらっしゃませ」とは言わない。「こんにちは」という。ディズニーランドは設備も一流品だが、中で働く従業員も一流品で本物の「サービスソフト」を顧客に提供してくれる。
ディズニーランドの本物志向は徹底している。「ビッグサンダーマウンテン」で使われている鉱山の小道具はスタッフが半年かけて米国中を駆けめぐって探してきたものだ。「もちろん恩着せがましく、本物だというような説明書きはいっさいない。本物でさりげなくゲストを迎えることに徹しているからだ。野暮とは無縁の「粋の世界」といえるのではないだろうか。
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