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「逆成功のルール」 1,400円

■■   石原由美子(ダイヤモンド社)  ■■
■■           2004.12.9発刊  ■■
  IT関連のジャーナリストとして知られる石原由美子氏が日本で得た資金をつぎ込み英国に社会人留学。意気揚々とロンドンで留学生活が始まったのもつかの間、投資ファンドを騙る詐欺に遭い、生活は一変してどん底に。浮ついた気分も吹っ飛び、ロンドンで生活しているうちに、そこでどんな逆境にもめげずに、力強く生きる英国人達のパワーに接し、彼らから生きる力を教わる。どんな逆境をもひっくり返し、成功に導く彼らの強靱なパワーを、石原氏は「逆成功」と名付け、今回初めて日本に紹介する。この本は、アメリカ発の弱った心臓をカンフル剤のように強い刺激で動かすような「成功本」とは逆をいき、どちらかというとハーブ薬のようにじわじわと効いてきて、ゆっくりと確実に心に浸透し、人生に明かりをともすという意味で「逆成功」と名付けられた。つまり、アメリカ式の成功マニュアルは、まるで洗脳されるように一時期は効いても、洗脳から冷めたときの揺り戻しはひどく、落ち込みからなかなか立ち直れない状態にまで落ち込むことが多い。それに比べて、栄光の時代はとうの昔に過ぎ、厳しく過酷な環境に生きる英国の人々が生きる知恵として長い年月をかけて洗練してきた「裏側の成功法則」ということができる。

 「逆成功」の法則は、金銭的な利益や、エリートの肩書きよりも、人生の充実を優先させる。歩むべき道をじっくり探し、仕事にのめり込まず、人生を大いに楽しみながら、「かえって成功していま」状態になることを「逆成功」はめざす。ねじりはちまき、必死の形相など無用。力は抜けている。しかし、無気力とも違い、むしろ生きることに熱心で、こだわりは人一倍強い。その集中力で、お金を儲けることもあるそうだ。

 日本も、長い低成長時代を経験する中で、富裕層と一般層の二重構造が進んだように見受けられる。昔のようにがむしゃら働ければ、必ずリターンが返ってくるというような単純なルールは通用しなくなった。分断された一般層の人たちが、富裕層にのし上がるべく、たくさんの成功法則に関連する本が出版されているが、それを読み、たくさん努力したこころで成功するのはほんの一握り、後は大きな挫折感を味わい、借金を抱え、なかには家族を路頭に迷わせるまでに追い込まれる者も出てくる。そこで、著者は、日本人は気質的に英国人に近いと考え、英国式の「逆成功のルール」を日本に紹介しようと思い立ち、現地の人に取材を数年かけて行い、今回本にまとめ出版したものである。
 逆成功をめざすからといって、野心を捨て去るわけではない。逆成功を目指す者は仕事ではなく生きることに熱心で、こだわりを人一倍強く持つ。成功は苦労で勝ち取るとは思っていない。好きなものにとことんこだわり、エネルギーを集中させる。その集中度がすごいため、思わぬ対価が発生しお金持ちになることだってある。でも、逆成功はめざす者は決してお金とか成功を1番目の目標においていない。彼らにとって、逆成功をめざす姿は、明るく、軽く、格好良くなければならない。そして、失敗を恐れない。仮に失敗しても、それをあっさり認め、すぐにまた走り出す。

 著者の石原氏は、この「逆成功のルール」をものにしたいがため、ロンドンに在住する家族全員が典型的な逆成功の象徴のような家庭を見つけ出し、彼らの取材に数年を費やし、その取材結果をまとめたものが本書である。今年、日本では勝ち組、負け組という言葉が流行ったが、いずれ日本も英国のように富裕層と一般層が明確に分かれ、階級社会に近い社会構造ができあがることが予想されている。しかし、日本は英国やインドのような階級制に慣れていないので、これから様々なあつれきを起こす可能性がある。しかも、政府のゆとり教育、愚民化政策のせいで、階級社会として落ち着くまでには、相当の長い期間を要するであろう。これを乗り切るためにも、英国の「逆成功のルール」を取り入れる必要があると、石原氏は説く。

 石原氏は、英国で逆成功の象徴的存在と言われている総勢100人を超える大ファミリーを取材した。彼らのワクワクした生き方、お金や他人の物差しでは測れない幸せの秘密に迫る。


 石原由美子氏が「逆成功」モデルとして選んだ家族は、総勢100人の大ファミリーである。その家族の長「おやじさん」は、大工で身を立てた後、BBCの現場制作責任者になり、引退した後はまた大工に戻り悠々自適の生活を送っている。

 逆成功はダメもと精神を大事にする。就職の面接ではったりをかましたり、平社員のくせにいきなり社長のところに行って部長にしてくれとネゴったり、釣り銭に外国銭を混ぜて平然と差し出したり、日本人には真似がしづらい事も平気でやる。親方は言う。「上流階級ではないから、自分を大きく試すチャンスなんてめぐってこない。だからこそダメもと精神で何でも体当たりしてみるまでだ」うまくいけば儲けもの。まず、うまく行くことはないが、積極的で強い人間になることはできる。親方は言う。「エネルギーはすべて仕事に使うな」親方だけでなく一般的に外国人は日本人の「過労死」の意味がわからない。「死ぬほどきつければなぜ上司に言わないのか」といぶかる親方に対し石原氏は、「仕事に対する責任感が強い」と答えた。親方は「大人として自分の自由を守れないような人間はほめられたものでない。会社の奴隷になって死んだ後、残された家族を誰が守るのか」と親方は嘆く。逆成功のルールは定刻が来たら、さっさと帰る。そして、趣味やファミリーと一緒に過ごす時間に費やす。帰宅後の活動が尋常でない。日本のようにウイークデーに家に帰り着き、晩酌をして寝るというような単調な生活はしない。帰って趣味に高じたり、ファミリーと遊ぶためのエネルギーは絶対確保しておくのである。親方は「ストリート・ワイズ」を推奨する。ストリート・ワイズは、どんな場所でも生き残ることができる人間を指す。つまり、日本の学校で教えられた子どものように、「成績優秀だけど、世間知らずで、生きる能力に欠ける」ものたちとは正反対だ。


 逆成功への道に生きる「親方」は、ストリートワイズをめざせと言う。ストリートワイズとは、街のなかで生きる賢さ(ワイズ)を身につけた人間を指す。マネジメント面で人心掌握術に長け、交渉力を有し、ボーダーレスで豊富なネットワークを持ち、携帯電話一本でたちどころに連絡をつけ、問題を解決する仲間たちだ。親方達は、独自のネットワークを形成している。英国の警察はあてにならない。殺されたら殺されっぱなし、盗まれたらそれっきり。(今の日本もそれに近づきつつある)だからこそ、裏社会も含め、様々な自称プロ達でネットワークを形成している。これらの一般人で構成される「ワーキンググループ」は人脈が宝。信頼できるワーキンググループの一員になることでセキュリティにも大きな影響を及ぼすのだ。親方は仕事を生き甲斐にしてはいけないと言う。充実感はあるかもしれないが、仕事を生き甲斐にまで祭り上げると、息苦しくなる。仕事で楽しませてもらおうという受け身の姿勢をいけない。仕事にべったりすると、仕事に翻弄されることにもなる。英国にはダブルの肩書きを持った人が多い。5時になると速攻で帰って真剣に好きな趣味に没頭するから、プロの域にまで高めることが多いそうだ。だから、プロの建築設計士がプロの音楽家、プロの不動産がプロの庭師であったりする。英国では会社べったりの生き方をする者はいない。会社にはスキルを提供しできるだけ多くの報酬を得るという整理をしている。

「自分がいかに組織の中で重要人物と思っていても、それは錯覚に過ぎない。いくら優秀でも年を取れば若い者と入れ替わらなければならない。オレたちは消耗品だ」

 仕事には妥協がつきものだ。いくら好きな分野でも組織内のあつれき、上司の価値観などで手あかまみれになる。「好きなことを仕事にできれば幸せになれる」という考え方は幻想にすぎないと、親方は言い切る。さらに次のように言葉を続けた。、

「いままでに興味が持てなかったこと、やったこともないことでも、やってみれば結構ハマる。試してみればいい。人生半分もいかないうちに、好きなこと決めてしまっては人生の幅を狭くするだけではないだろうか」
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英国ワーキングクラス直伝「逆成功」のルール
石原 由美子 (著)

価格: ¥1,470 (税込)




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