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12月5日〜12月9日(毎日スキルアップ通信で紹介)

   「人を動かすプレゼンテーション」

       ■■          杉田 敏 著       ■■
       ■■           PHP(2005.12.8)    ■■


 著者の杉田氏は、朝日イブニングニュース記者を経て、米国留学後、『シンシナティ・ポスト』記者、バーソン・マーステラ社長、日本ゼネラル・エレクトリック社長などの輝かしい経歴を経た後、現在は、日本のPR業界大手のブラップジャパン取締副社長を務める。

 日本では数少ない国際的なPRのプロとして、企業広報、危機管理広報、コミュニケーション・トレーニングなどに携わっている。

 具体的に、どういうことをやっているかというと、例えば、企業のトップ経営者や、広報担当役員、政治家、スポーツ選手、医師などマスコミとのインタビューの機会が多い職種に対してメディアトレーニングを行い、自己流でやってきたプレゼンを矯正し、洗練化することを業としている。

 受講者は企業のトップや政治家などで、これまでプレゼンは場数をこなし自信がある者も多い中、それがいかに一方的で、自己流であるか悟らせ、プロのプレゼントは何か、どこがどう違うのか、徹底的にノウハウを伝えることを業としている。


 本書は、誰でもできる普通のプレゼンと、著者の杉田氏が副社長を務めるPR会社の唯一の収入源であるクライアントに対して行うプロのプレゼンの、どこが違うのかなど、具体的なノウハウにまとめ、教えてくれる。

 日本人は、あ・うんが通じる国と信じられ、プレゼンの技法について本格的に教育を受けている者は少ない。終身雇用制がくずれ、成績主義が浸透するにつれ、日本でも個々のビジネスパーソンのスキルとして、プレゼンの重要性が叫ばれるようになったが、他民族が同居する欧米とは、比べようもないくらい、プレゼンの力はついていない。

 2005年7月6日、IOC総会会場において、2012年の夏季オリンピック開催地をめぐり、英国が並み居るライバル国と戦い、見事、自国開催を勝ち取った。成功の要因は、国力でなく、プレゼン力であった。

 候補国は、IOC委員の前で、俳優やスポーツ選手を登場させ華やかに自国をアピールした。ところが英国は、子ども達がオリンピック映像に出会ってスポーツを始め、選手に育っていくという物語のビデオを流しながら説明した。豪華さに目を奪われず、選手主体の五輪であることを強調、選手村の環境のよさを訴えた。

 英国の勝利は薄氷の勝利であったといわれる。プレゼン本番で勝ち取ったのだ。英国は他国より3日もはやく現地入りして、3日間ホテルにこもり、最終プレゼンのリハーサルを行ったという。

 これからの実力世界にあっては、お金、コネ、政治力よりもプレゼン力が求められるようになる。ビジネスパーソンの必須のスキルとなる。

 莫大な金銭が動く世界的なイベントを誘致する、仕事をとる、面接、研修、恋の告白まで、プレゼンで決まる。



 プロのプレゼンター、杉田氏は「プレゼン」を次のように定義する。

■自己の能力と信頼性を立証する手段
■個人の存在感を高めるための手法
■自己主張のため、生存競争に生き残るための手法
■論理と情熱に支えられたプレゼンテーションは人の心を動かす。
■上達しようと思うなら、『読み』『書き』『話し』のコミュニケー
 ションスキルを磨く必要がある。

 本書の内容は、上記の定義に集約されていると思う。

 相手を教育しようとするのは「講義」であって「プレゼン」ではない。
 プレゼンには明確な「目的」があって、人を動かすことができてこそ成果ということができる。一方的なレクチャーとは違う。

 このためプレゼン力をつけるためには、まず、コミュニケーションスキルを向上させる必要がある。


 コミュニケーションの基本は、【KISS】

 Keep it simple and specific
「シンプルに、かつ具体的に」という意味だ。

 これを象徴するような手法に「3つの〜」という言い方でポイントを絞る方法がある。

「申し上げたいことが、3つあります」

 これを、口癖になるまで、使うようにすると、プレゼン力は一層、磨かれるはずだ。

 情報商材の販売画面で、チェック印がついたセールスポイントが羅列されているのを見かけるが、文章としては7つぐらいまでが適当かもしれない。

 でも、話し言葉となると、7つは多すぎる。3つが効果的である。
 言いたいことがたくさんあって、3つにまとめるのは難しいと考えられる方もいらっしゃるかもしれないが、そこは、『書き』の能力を総動員して、3つにまとめるようにしてほしい。

 大企業のトップや、政治家は概して表現力豊かで、おしゃべりな人が多い。
 考えていることをぽん、ぽん、言葉にして口にできる才能を持って、うらやましく思う。杉田氏が、ある大手証券会社の社長が、研修の場であまりに饒舌だったので、その社長に、「ご家族の方からしゃべりすぎと言われませんか」と聞いたところ、「言われません。家ではほとんど話しをしませんから」と憮然と答えたという。

 意思伝達の不徹底という点からは、オーバーコミュニケーションも、アンダーコミュニケーションも、同じらしい。と、書いたところで、家庭でアンダーコミュニケーションのkougaiは、これを読んだ妻から今日も責められるのであった。ちゃんちゃん(笑)


 コンサルティングの世界に「エレベータテスト」というのがある。
 エレベータに乗っているくらいの短い時間に、上司や顧客に効果的なプレゼンができるかというトレーニングである。

 これは、働く人であれば、誰もが経験するのではないだろうか。
 会社の上司は、人との面会や会議で、スケジュールはいっぱいに詰まっている。でも、どうしても伝えなければならない案件があって、飛び込んで要領よく説明し、説得しなければいけないような場面である。

 でも、これは、相手が偉いと言っても、上司であり、あなたのことをよく知っており、事情もわかっているので、それほど苦労はしない。ところが、PR会社などで働くプロのプレゼンターは、ほとんど初対面に近い会社のトップに、玄関口でいっしょになって歩きながら、エレベータにいっしょに乗って、役員室に相手が入るまでに、プレゼンを済ませてしまうことができるのだ。

 それが、とっさにできるようになるためには、あらかじめ、一番のポイントや特色を頭にたたき込んで、どのような状況においても、とっさに説明できるようにしておかなければならない。

 エレベータの中でなくても、いつも、「結論」から、説明するよう癖をつけておくべきだ。会議室で、時間があると思っていたら、前の順番の人が、長々とやってしまい、用意していた1時間の原稿を10分で説明しないといけないというような経験をされた方も多いのではないだろうか。「結論」から話す癖をつけていると、そんな場面でも、適切に概要を知らせることができ、かえって評価を得ることもできるのだ。
 


 プレゼンの重要性が、少しずつ日本にも浸透している。

 2005年の「郵政民営化」の是非をめぐり行われた解散、総選挙が、その象徴のように思われる。

 従来の選挙は、国全体の組織票の行方で決まっていた。
 ところが、だんだん、候補者の髪型、髪の毛の色、服装、スタイル、色、アクセサリー、姿勢、話し方などがクローズアップされるようになってきた。

 政策論争がクローズアップされないのは、以前と変わらないのであるが、それでも以前よりずっと、人に与えるイメージというプレゼンの要素が大きく占めるようになってきたのである。

 プレゼンは、言葉だけでなく、人に与えるイメージも大変重要な要素だ。

 政治家は、メディアに出るとき、イメージをとても気にするようになった。

 政治の世界におけるプレゼンは、日本よりもアメリカが一歩も二歩も進んでいる。

 1960年の大統領選において、ニクソンとケネディがテレビとラジオの同時中継で政策論争を繰り広げた。

 ディベートとしては、ニクソンの方が優勢であった。
 ラジオを聴いた人は、ニクソンに分があると思った。

 ところが、テレビを観ていた人は、ケネディが優勢と感じた。
 要するにニクソンは濃いひげが災いし、テレビ映りが悪かったのである。テレビ視聴者に、陰険な悪党のようなイメージを与えてしまったそうだ。

 杉田氏は、政治家には、テレビ映りのよい定番の服装を薦める。

 定番とは、紺あるいは黒っぽい背広に赤系統のネクタイを指す。
 ネクタイの赤は「パワー」を象徴する色と言われているそうだ。
 川口順子さんは、外務大臣就任時に真っ赤なスーツを着て会見に臨んだ。
 重要な外交交渉における「勝負服」は"赤"であったそうだ。


 プレゼンテーションの最終目的は、相手を動かすことにある。

 前回の谷原誠氏の著書の中心テーマも「説得力」であった。

「思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術」
http://johou.net/syoseki/kousyousettokugizyutu.htm


 哲学者アリストテレスは、説得力の要素は「エトス」、「パトス」、「ロゴス」の3つだと教えた。

 「エトス」は倫理、品性、人柄、精神、気風などを表し、いわば情報の送り手に信頼性を意味する。仏教の「徳」に近い。

 同じことを言っているのに、A氏が言うと嘘っぽく聞こえ、B氏が言うと説得されてしまうことがないだろうか。「エトス」が作用しているらしい。

 杉田氏がアメリカで新聞記者をしているとき、ある私立探偵からパートナーが浮気をしているかどうかを見分ける方を教えてもらったそうだ。

 男性であればひげを剃る時間が長くなり
 女性であれば化粧にかける時間が長くなるそうだ。

 要は、外見にこだわり、これまで以上に時間とお金をかけるようになるそうだ。
 これが「エトス」を上げることである。
 浮気でなく、プレゼン力をつけるために「エトス」を上げなければならない。

 杉田氏は、大手企業の役員にメディアトレーニングを行うとき、「背広は30万円以上のものにしてください」とアドバイスするそうだ。
 仕立てのいいスーツは、加齢による弱点をカバーし、着ている人に自尊心を与える。
 人生における重要な局面で着用するため、高級スーツは必需品であるそうだ。



 プレゼンで相手を動かすためには、

エトス・・・品性、人柄、精神、気風など。日本の「徳」に近い。
パトス・・・感情のエネルギー。熱意、感動も含む。
ロゴス・・・ロジック。言語、議論など。ディベート力を指す。

が必要であると杉田氏は説く。

 杉田氏は、プロの経営者に対してプレゼンのトレーニングを行った後、プロのスタイリストともに経営者の自宅に伺い、ワードロープの中を見せてもらうこともあるそうだ。

 それだけ、プレゼン以前の人に与える印象、イメージを大切にしている。
 いわゆる「初期エトス」を重要視している。


 次に、熱意、感動の「エトス」について説明する。

 杉田氏は企業の中で、アサヒビールは「エトス」が高いという。
 アサヒビールの社員は、ビールの話しになると大変盛り上がり、24時間ビールのことを考えているのではないかと思わせるほど、ビールが飲むのも、作るのも、売るのも好きという気持ちががんがん伝わってくるそうだ。

 kougaiも昨日、中国から来たお客さんをお酒のテーマパークに連れて行ったとき、テーマパーク内の試飲コーナーで従業員が、それぞれの商品の味の違いを熱をこめて説明していた。見るからにお酒が好きそうで、観光客がその従業員を取り囲むようにしていた。

 パトスが高いビジネスマンは杉田氏によると、日産のカルロスゴーン社長と、ライブドアの堀江貴文社長であるそうだ。彼らの講演を聴きに行った人で、その熱の入った語り口に魅せられた方も多いと思う。

 
 「ロゴス」は、ロジックの語源で、言語、議論などを意味する。

 論理的な裏付けもなく、思いつきや勘でものを言っても、相手には信用してもらえない。

 弁護士谷口誠氏は、感情のパトスと議論のロジックを、うまく操作する術を著書「交渉・説得の技術」で教えてくれる。

 日本人は議論が下手だ。欧米と比べ感情のパトスが勝ちすぎ、議論を続けていると、次第にカッカしてくる。谷口氏は、戦いの中で学んだ感情的にならない交渉術を当著の中で詳しく教えてくれる。

 kougaiも、この本でかなり心構えができてきたように思う。

【思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術】
 http://tinyurl.com/7t6et


 プレゼン必勝法を、著者の杉田氏は、とても印象的な話で披露してくれている。

 ある大手会社の会計事務所で、毎朝決まった時間に出社し、決まった時間に帰り、それを何十年も続けた一人の会計士がいた。その彼が、朝一番に机の一番上の引き出しを鍵で開け、中にあるのをしばらく見ては、引き出しを閉じ鍵をかけることを毎朝の習慣にしていた。周りの人々は、何を見ているのか、知りたくてたまらないのだが、誰一人彼に尋ねることができない。ある日、几帳面な彼が出社せず、自宅に連絡したところ朝早く突然亡くなったという。遺品を整理することになり、社員達が取り囲む中、彼の机の引き出しを開けることになった。中からでてきたのは、

「左に資産、右に負債」と書いたメモであった。


彼は、これを毎朝確認して仕事を始めていたのだ。
それほど、「基本」は大事ということである。

つまり、プレゼンの必勝法も、いつも基本に立ち返ることが重要であるということを言いたかったわけだ。

 それでは、プレゼンの基本は何かとなると、2つある。

●人を動かす
●練習、練習、練習


 これをメモにして、前述の会計士のように机の中に入れるのでは衆目を集めてしまうので、どこか見えるところに張り、毎日確認するのはいい手かもしれない。
 毎日眺めるだけでも、プレゼン力はついてくるのではないだろうか。





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         杉田 敏 著
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