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  『1ページ・マネジャー』リアズ・カデム著
          (東洋経済新報社2008.3.6)
                    
 
 やらなければいけないことがたくさんあり、何から手をつけてよいかわからないときがある。

 一つのことをやっていても、次から次に新しい仕事が割り込んできて、圧迫感に苦しむことある。

 これらは、誰もが経験することだ。
『一点集中力』の著者伊藤真氏は、司法試験を受ける人のための指導校「伊藤塾」を経営している。司法試験といえば、資格の中でも難問中の難問である。それでも、伊藤塾からたくさんの合格者を排出している。

 その理由は一つ。「1点集中力」にあるのだそうだ。


【1】あらゆる限界を突破せよ

 虫眼鏡で焦点を一点に合わせると、紙はめらめら燃えはじめる。
 人間の意識も同じように一点に集中させると、すごい力を発揮する。

 誰もが虫眼鏡のレンズを持っている。
 子供の頃は使っていたが、だんだん大人になるにつれ、その存在さえ忘れている。
 童心に返り、無心に遊んだ頃を思い出そう。
 意識を一点に集中させるのだ。
 一点集中力は「幸福になるための手段」でもあるのだ。

 コツはよけいなものを思い切り捨てること。
 伊藤氏は受験校の経営に専念するため、弁護士資格を捨てた。
 片手間に学校の経営はできないと判断したからだ。
 弁護士としての地位も名誉もかなぐり捨て、退路を断ったわけだ。

 戦国の武将は相手の逃げ道を確保してから攻めにかかった。
 逃げ道が断たたれると人は信じられないような力を発揮するからだ。

 集中したいときは、よけいなものを捨て去る勇気が必要だ。
 そのコツは、集中すべき対象を絞り込み、単純明快にすることだ。
 全体をいつも俯瞰するような癖をつけると、今はどこに集中させるべきか簡単に見つけることができるようになる。

 伊藤氏に言わせると、模擬テストなどは少々時間に遅れて出席した方が、火事場のバカ力を発揮できるし、集中力の訓練にもなるそうだ。



【2】仕事が必ずうまくいく法

 何をやってもダメだと悲観している人は、まずは小さいことから集中して始めよう。

 掃除なら掃除だけ、コピーならコピーだけ。
 それも効率よくするには、どうすればよいか、それだけについて考え、できるだけ短時間に終了することに意識を集中させる。
 小さな成功の積み重ねで、だんだん大きなことにも集中力が発揮できるようになるそうだ。

 集中していると「もう限界」と思うときがやってくる。
 そこを何が何でも突破するのである。
 「一点集中力」を鍛えるチャンスである。

 下積み時代の過ごし方で人生は変わる。
 経営者や著名人には必ず下積み時代がある。
 苦しい時代を乗り越えてきたからこそ今の地位がある。
 下積み時代は自分の基礎をつくる大事な時期だ。
 人から頼まれて「できません」と答えるのは簡単だが、やってみてわかることも多い。
 集中力を養うために進んで引き受け、下積み時代を楽しいと思えるようになれば、人生に勝利したも同然だ。


 クリエイティブな仕事も準備の積み重ねによって成り立つものだ。
 資料や文献に集中してあたる。
 テーマや企画を常に考える。
 お風呂に入るときも、食事するときも、常に考え続ける。

 それらの時間によいアイデアは浮かばないかもしれない。
 伊藤氏は、それを「有効な無駄」と呼んでいる。
 クリエイティブな仕事は、無駄の積み重ねがないと成立しないからだ。

 伊藤氏の場合、徹底的に考えた抜いた後は、無心で部屋の中をぐるぐる歩き回ったり、お気に入りのクラシックCDを聴いたり、目をつぶってぼーっとする。

 頭の中で、化学反応が起き、突然いいアイデアが浮かんできたりする。
 あるいは、2,3日後に思いもよらぬアイデアが浮かんできたりする。
 

 
【3】トレーニング

 子供の頃、何かに集中できていた頃を思い出してほしい。
 今でも時間を忘れるくらい好きなことに集中できるものがあるかもしれない。
 つまり、誰にでも集中力があるが、有効に使っていないだけなのだ。

 ただ、精神論で「集中」と頭の中で唱えても実現は難しい。
 集中できるように、目の前に参考書や資料、あるいはインターネットのリンク先などを集めておく。ノートやメモ、付せん、アンダーライン用のペンなども用意する。
 音楽があった方がいい人は、音楽を流しっぱなしにする。

 伊藤氏は、資料が何でも手に届く範囲にないと気が済まないので、段ボール箱をそばに置いてあったり、机にいろいろなものが置いてあったり、見た目はかなり散らかっているそうだ。

 また、集中する場所としてファミレスが気に入っているという。
 各人にあった集中できる環境を整えることが大事だ。
 
 どうしてもいらいらして集中できないときがある。
 そのときは、「もう一人の自分」を用意しておく。
 集中できない「自分」を冷静な目でながめる「もう一人の自分」だ。

 『あっ、きた、きた。これは試練だ』
 『ここで、どう対処できるかで、自分の価値が決まるぞ』

 もう一人の自分がいると、いやなことを言った人の心情まで理解できるようになる。
 いやなことは、すべて自分の糧になると思うようになれる。

 集中ばかりでは疲労が重なる。
 集中と散漫のメリハリを大切にしよう。

 気を抜くところは徹底的に気を抜こう。
 一点集中は、無駄なことにはまったく関心を示さないことで成り立っている。
 一点集中力しているときは、ほかのことは忘れてしまってよい。


 それでも気が散るときは、いったん、立ち上がり、冷蔵庫まで歩き「何を飲もうか」あるいは「何を食べようか」真剣に考える。いったん全然関係ないことに集中することで、結構、疲れがとれるのだ。歩き回るだけでもいい。そして、また戻って意識を集中させるようにする。気が散ったときの「自分なりの儀式」を持つようにしよう。
 

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