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「感動のサービスが実現する一瞬」 1,500円
田中 司朗 中経出版 2004年11月3日発刊
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筆者の田中司朗氏は、全国のフランチャイズ店や一流ホテルなどのサービス業を対象にしたコンサルティング活動を通して、成功する企業には2つの共通点があることに気づく。
一つは、すばらしい企業哲学の存在である。それは「作品」と呼べるほど、みごとに築かれたものであり、そこで働く人たちに浸透している。
もう一つは、そこで働いている人たちが輝いていることだ。従業員がハッピーでなければお客様もハッピーになれないという考え方が企業風土として育っている。
本書には、サービスをこよなく愛する人たちのドラマが描かれている。紹介される企業は、
ザ・リッツ・カールトン大阪、
全日空、
増田ドライビングスクール、
フォーシーズンズホテル椿山荘、
六花亭、
MKタクシー、
千葉夷隅ゴルフクラブ
の7社だ。
現代人は、やさしさや人間的ふれあいを求めている。これから「感動の時代」、「心の時代」を迎え、感動を顧客に提供することができる企業が今後は伸びる。「感動力」もビジネススキルの一つとして認知される世の中になったといえるのではないだろうか。
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【ザ・リッツ・カールトン大阪】
石ノ森 章太郎原作の「HOTEL」はTBSでもドラマ化されたのでご存じの方も多いだろう。熱血ホテルマン・赤川一平(高嶋政伸)がホテルプラトン内で繰り広げる人間模様を描いたドラマである。このドラマを地でいくような熱血ホテルマンたちが活躍しているのが、大阪梅田のホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」である。
そこでコンシェルジュ(接客責任者)として働く丸山ひろみさんの仕事ぶりが紹介されている。丸山さんは、足を痛めた外国人のお客さんから、薬を売ってくれないかと頼まれたが、薬事法によりホテルが薬を売ることはできないので、自分で鎮痛剤とか湿布薬を買ってきてお客に与えたことがあった。与えられた外国人が感激し、常連さんになったことは、想像に難くない。
また、あるとき、ロビーラウンジでカップルの男性が女性にプロポーズをしようとしていることを知って、男性に頼み、そのプロポーズを閉店間際まで引き延ばしてもらうことにする。準備が整うと、カップルを夜景が見える特別の席に案内して、BGMを変え、ケーキをプレゼントする。また、男性が女性に指輪を与えるタイミングを見計らって、スタッフ一同で「おめでとうございます」と合唱する。女性が感動したことはもちろん、カップルの一生の思い出を、ホテル側が提供することができたのだ。これらのイベントは従業員の裁量で決めることができる。使えるお金は1回2千ドル(約22万円)というから驚きだ。客の忘れ物を困っているだろうと考え、新幹線に乗って東京まで届けたスタッフもいる。彼らは上司に判断を仰ぐことはなく、絶えずお客の状況に気を配り、何かあると判断したなら、即座に行動に移すことが多い。これらの独断の行為に対して、上司は、とがめるこどころか、いいことをしたと従業員は表彰される。表彰者の中でも特に選ばれた従業員にはご褒美に海外のリッツ・カールトンホテルの旅行券がもらえるという。従業員同士が助け合うと、助けられた従業員は助けた従業員に「ありがとう」のカードを渡すそうだ。「感動」をみつけること、与えることに夢中な彼らから笑顔が絶えることはない。顧客も感動をうけることで、必ずリピーターとして帰ってきてくれる。
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【全日空(ANA)】
全日空(ANA)の評価が高まっている。全日空を利用するとき、客室乗務員に注目してほしい。全日空が変わりつつあるのは、業界初の女性執行役員として就任したベテラン客室乗務員山内純子さんの力によるところが多い。筆者の田中氏自身、クライアントに会いに行くとき行き帰りにANAを利用するそうだ。朝、機内に入るや乗務員に「お客様、本日は全日空をご利用いただきありがとうございます。お客様は本日18時の便でお帰りですね。私どももご一緒させていただきますので、よろしくお願いします」と声をかけられたそうだ。そして、ビジネスを終え、機内に乗り込んだとき、今度は、「お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした」と迎えられる。すばらしい顧客管理である。客室乗務員の笑顔はすばらしいと思うが、これは山内純子氏が徹底して新人に笑い方を教えた結果でもある。彼女が教えるときに大事にしている言葉「頭のてっぺんからつま先まで神経を張り巡らせ、お客様の気持ちを感じ取る。それがサービスの基本」
ANAにおいても、昨日の「ザ・リッツ・カールトン大阪」と同様、カードを客室乗務員に渡し、素晴らしいサービスを見たときに、お互いを称え合うためにカードを使っているとのことだ。
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【益田ドライビングスクール】
島根県益田市にある「益田ドライビングスクール」に入校すれば、車の免許を取れるだけでなく、人生の価値観まで変えてしまうという全国でもユニークな自動車学校である。この学校は16日間合宿制で、生徒達は徹底して「あいさつ」と「掃除」を教えられる。それまで、親と口をきかない子、すぐケンカをする子も合宿生活の中で、とことん仲間と話し合い、自分達がどんなに突っ張っていても、親など周囲の優しい心遣いで生かされていることを知り、やがて生かされていることに感謝の念を抱くようになる。これまで、核家族化が進み、兄弟も少なく、個室が与えられ共同生活の実感がない子たちが、同じ悩みを持つ子との共同生活を通して、あいさつと掃除を徹底して教えられるなど、質の高いスクールのインストラクターやスタッフの指導により劇的に変化していくのである。スクールの中では、ゴルフ、テニス、茶道、美顔エステなど、何でもある。教習の間、時間を楽しく過ごし、仲間と語らい、思い出をつくることができる。社長の小河は、「人は誰でも生まれながら純粋な心をもっている。自分たちは、その心を引き出すお手伝いをしているだけだ。モノ至上主義は終わりを告げ、これからは心の時代だ。若者達は真っ先にそのことを感じ取っているようだ」と話す。毎年10月に「益田ドライビングスクールMDS祭り」が開催されるが、全国から卒業生たちなど約2万人が訪れるという。スクールには、親からの感謝の手紙がたくさん届いている。
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【フォーシーズンズホテル椿山荘】
目白の住宅街の一角に位置するフォーシーズンズホテル椿山荘は世界
でもトップクラスにランクされる高級ホテルである。その支配人福島賢
次氏が心がけていることは「ホテルに一歩踏み入れたとき、スタッフや
インテリアから自然に醸し出される”あたたかさ”をお客様に感じてい
ただけるような環境づくり」だそうだ。
ある外国人女性が東京のデパートで30万円の真珠のネックレスに目
がとまり思わず買いたいと思ったが、そのままホテルに帰ってきて、そ
の後、真珠のことが頭から離れない。ホテルのコンシェルジュに相談し
たが、日本の地理に不案内の外国人の説明は要領を得なかった。コンシ
ェルジュはあきらめず根気よく話を聴き、その店は日本橋高島屋でない
かと思い当たった。コンシェルジュは、さっそく高島屋に出かけ、それ
と思われる真珠のネックレスを購入して、何も知らされていない外国の
女性客に真珠のネックレスを差し出してみた。女性は驚き、表情は次第
に感動に変わり、コンシェルジュの手を握り感謝の気持ちを満面に表し
た。
お客様と交流し感激を共有できるコンシェルジュは、幸せな仕事であ
る。コンシェルジュは、そのために絶えず自己啓発を欠かさない。お客
様からのあらゆる質問や要望に応えなければならないからだ。
「超一流」と言われるためには、伝統や格式だけの問題でなく、利用
したお客様が素晴らしいサービスに感動し、これこそが超一流とお客様
の口から言わせなければならない。支配人福島賢次は、ホテルの正社員、
パートを問わず従事する500人全員の名前を覚えている。そして全員
に手書きの誕生日カードを配っている。福島は部下との交流をとても大
切にする。そのようの大切にされる従業員は高いモラルを持ってお客様
のサービスにあたる。フォーシーズンズホテル椿山荘にも、こよなくホ
テルを愛するファン層のようなお客様がいて、ホテルのレストランで女
性に結婚を申込み、結婚記念日には必ずホテルのレストランで夕食をと
もにし、今では子連れでホテルを訪れているご夫婦がいらっしゃるそう
だ。
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