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「考える技術」 1,600円
大前研一 講談社 2004年11月4日発刊
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大前研一氏は、現在は経営コンサルタントとして知らぬ者はいないが、もともと
は原子力の設計を専門とする科学者である。大前氏を経営コンサルタントをめざすことになったきっかけが当著の冒頭で語られているが、勘違いが原因という説明のくだりがなかなか面白い。その募集の内容をエンジニアリングのコンサルタントと勘違いし、アメリカのコンサルタント会社マッキンゼーの面接に望むのだが、経済用語がちんぷんかんの大前氏は、面接官の一人がその才能を見抜き採用されてしまう。経営分析など何も知らない大前氏は半年もすると膨大な量の経営分析がこなせるまでに成長する。その原動力となったのが科学者時代に培われた「論理的思考法」であるという。
大前氏によると科学的分析も経営分析も、仮説→検証→実験を繰り返して「絶対に間違いがない」結論を出してから、顧客に提言する手法は同じだという。膨大なデータを積み重ね、その事実に基づきシャープな結論を出し、経営者に提言する。経営トップよりも直近の現場に何度も足を運び、フィールドインタビューを繰り返し、問題点を探り出し、仮説をうち立てる方法をとったので、経営トップよりも内情に詳しく、かつ、客観的に分析、解析を行うので、貴重な提言として提供できるのである。
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科学的分析を経営分析に持ち込んだ大前氏は、そのコンサルタント手法を著書「企業参謀」にまとめ初出版したところ、数カ国語で翻訳され、世界中のベストセラーになる。大前氏が入社して、まだ3年しか経っていない32歳の出来事である。その大前氏が、当著「考える技術」で、論理思考、アイデアのつくり方、先見性の磨き方など余すところなく紹介してくれる。大前研一氏の思考ノウハウの集大成といえる著書である。
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人を納得させるために一番大事なことは、あれもこれも欲張らず、「提言は一つ」に絞ることだ。日本経済戦略の「提言225」、「骨太の改革案12項」などは、項目が多すぎ、実行できるはずがない。提言は一つでいい。十分な論理構成で経営者を納得させ、その提言を実行させることができれば必ず業績が上げることができる。これは、コンサルティングだけでなく、会社内でのプレゼンテーションにも通用する鉄則である。わかりやすく、具体的な提言ほど、会社を動かす可能性が高い。「あれもこれも重要、すべて直した方がいい」というのは評論家の仕事で、コンサルタントの仕事ではない。結果が全てなのだ。
大前氏は仕事の依頼を受けるとき、売上を伸ばしたいのか、サービスの質を改善したいのか、会社をスリムにしたいのかなど、いろいろ欲張らずに一番したいことを一つだけ依頼として受けることにしている。受け取った一つの課題に対して、フィールドインタビューを徹底して、社長でさえ知らない真実の情報をかき集める。
大前氏が行うプレゼンの順番は、まず自分がどれだけの入念な調査を行ってきたか示し、役員達に、思いつきでないことをわからせることから始める。それから提言の結論部分をずばりと簡潔に提示し、後は、逆ピラミッド型にその提言がいかに正しいかを構成していく。
問題点を羅列し、解決策はその逆を言ってるすぎないような駄目コンサルタントには気をつけるべきだ。
「営業マンに元気がない」→「営業マンは元気をつけるべき」
「商品に競争力がない」→「商品に競争力をつけるべきだ」
論理構成は、逆ピラミッドで、どんどん掘り下げていくとよい。最後に行き着くのは経営の場合は数字が一番で、説得力がある。この証拠の数字にたどり着けば、社内の人間たちを納得させることができるはずだ。なぜなら、誰もが、解決策やその方向性を掘り下げようとするが、入念な準備を怠っているがうえに、途中の仮説どまりで尻切れとんぼになることが多いからだ。
仮説で終わっていると感じたら、さらにフィールドワークを重ね、自分自身が論理を正しいと自信を持って説明できるようにならなければ、検証の手をゆるめてはいけない。油断すると、プレゼンの場で論破されることになるから要注意だ。
プレゼンテーションが上手になりたければ、日頃から論理的に言葉で説明するトレーニングが必要だ。たとえばコップに水を半分入れて机の上に置き、そのコップをテーマに20分間話ができるほど、論理構成力をつけるとともに、話の切り口のために、ネタを豊富に仕入れておかなければならない。コップ半分の水の話がとぎれそうになったときのために、自分の得意な分野に引き込んでいく話術も磨かなければならない。
大前氏は、日産のゴーン革命成功の本当の理由は、ゴーンの経営手腕というより、彼が誰も逆らうことができない「絶対権限」であったからだという。ゴーン氏は、占領軍のマッカーサーのような存在であり、例えば、下請け会社に購買費用の2割カットを要求し、何か異論をはさんできても「ジェヌセバ」(わかりません)と、取り合わず、それでも言うことがきかない系列会社は、ばんばん切っていったからだという。大前氏はゴーン氏をあまり評価していないようだが、ただ、ゴーン氏の改革に日産がついていけたのは、日産の人材や技術力が元々あったからだという考えには賛成する。大前氏によると、日本の企業は、いずれもゴーン氏が来日する以前の日産と似たり寄ったりの状態で、日本人同士のしがらみを断ち切れないために、子会社を切れなかったり、親会社の顔を立てたりして、お互いが足を引っ張り合っている。
大前氏によると、今の学校は人間の脳を壊す凶器であると手厳しい。学校は、いまだに、ニュートンの力学により、リンゴの落ちる速さや場所を求める勉強に固執している。解が一つしかない問題ばかり解かせるため、今の子ども達は、本来持つべき創造性を育てることができず、さらに、古い時代の価値観などを刷り込むのだから、学校は脳を壊す凶器以外の何ものでもない。現代は、大前氏によると「解のない」複雑系の社会だという。落ちてくるのはリンゴではなく、どこに落ちるかわからない「葉っぱ」であり、解のない問題に、ひたすら仮説を立て、それが正しいか正しくないか証明する忍耐力をつけなければ、これからの時代に生き抜いていく力をつけることはできない。
レストランで今、流行っているのは、いわゆる西麻布系と呼ばれている。こういう店に入ると、店員は「いらっしゃいませ」とマニュアルに書いてあるようなあいさつはしない。西麻布系では、「お客の顔を見ながら、思い浮かんだあいさつをしなさい」と教え込まれているから、「雨の中、大変でしたね」、「寒くありませんでしたか」となるそうだ。。これからは、マニュアルや答えがなくても、対応できる人材が揃った事業所や店舗が生き残っていく時代といえそうだ。
日本人のすごさは、試験勉強前にたくさんの知識を頭に詰め込み、試験が終わると全部忘れてしまうことだ。試験の後は、特に何も考えることもせず、敷かれたレールを無難に過ごそうとする。世界で日本が勝てなくなりつつある。西欧や米国は、絶えず「考える」トレーニングを欠かさない。知識は使ってなんぼのことしか教えないそうだ。
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考える技術
大前 研一 (著)
価格: ¥1,680
(税込)
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