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   勝間式「利益の方程式」
  
勝間 和代 東洋経済新報社 2008.4.17
                    


 著者の勝間和代さんといえば経済評論家としてだけでなく、書店のビジネス書ランキングで必ず顔を出す売れっ子作家だ。

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 勝間さんは公認会計士試験に史上最年少で合格。
 その後、子供を育てながら、中小企業診断士試験、オンライン情報処理技術者試験などに合格し、TOIEC900点を獲得。資格を生かしマッキンゼーやアンダーセンで経営コンサルタントとしてキャリアを積む。

 勝間さんはコンサルタント業務を通して、ほとんどのクライアント企業の経営課題は、「いかにして利益を増やすのか」に行き着くことを知らされた。

 そして多くの企業がこの原則に沿っていないことに気づく。
 利益が小さいため、そのしわ寄せが労働者に向けられ、長時間労働につながっている。
 勝間さんは、そのような現状を少しでも差し止められ改善できないかと考え、自分がコンサルで使用してきたノウハウを包み隠さず本書で明らかにすることにしたという。


 現在、多くの企業は利益ではなく売上増を求めている。
 利益を度外視して、無理な働き方や、必要のない仕事までつくっている。

 売上げが伸びている限り、顧客基盤も崩れず、人事問題も生じないからだ。
 よって「売上増は七難を隠す」とまで言われている。

 市場が飽和し、売上の伸びが鈍化してくると、必ず競争が激しくなり、売上高が増えているのに利益には繋がらない。

 今、企業に求められるのは利益管理である。


 わが国の企業においては利益を管理するための「マネジメントシステム」が不足している。

 社内での日々のコスト意識が希薄だ。
 月に一度、決算を行っているかもしれないが、利益が計算できることと、利益そのものが日々の職場における社員の行動規範に結びついているとは意味が違う。

 もちろん、利益コストの計算にお金をかけすぎるのは問題だ。
 勝間さんがこの本で言いたいのは、直感的に現場レベルでできる利益管理の方法の採用だ。

 個々の社員が利益をいつも意識において働き、報酬も利益で決まる人事評価制度が確立されれば企業の成長は約束されたも同然だ。


 日本では少子化が進んでいる。
 少子化の原因の1つが長時間労働と言われている。
 長時間労働⇒少子化⇒景気低迷⇒長時間労働の悪循環だ。

 業界で儲けている会社は、製品・サービス力の優位性を確保するため値崩れを起こさないよう気をつけている。

 業界で儲かっていない会社は、必要以上の売上拡大をめざす。
 そのため思い切った値付けをする。業界全体が共倒れ状態に陥っている。


 インターネットを使ったビジネスは貧乏神である。
 誰かが何かをはじめて儲かると、同じことを他者が一斉に始める。
 アフィリエイト、インターネット広告、eコマース、web2.0など全てが当てはまる。
 関わった人の収益性が一律に下がってしまう。

 追いつかれるまでの時間内にいかに稼ぐかが重要となっている。



 日本人の男性が太り続けている。
 労働時間の長さが原因と考えられている。
 仕事で疲れたビジネスパーソンにとって、コンビニなどから手軽に入れることができる食品によってカロリーを摂取することが唯一のレジャーになっているからだ。

 利益を上げることは企業にとって必要なだけではなく、私たちが人間らしく生きるためにも、地球の資源を長持ちさせるためにも必要な考え方だ。

 人間だけでなく企業においても、カロリーのように身近に利益を計算できるようにしたいと勝間さんは考える。

 通常、企業の利益管理に使われるのは損益分析であるが、経費を固定費と変動費に分ける計算が難しく、正確な結果が反映されないうらみがある。

参考:損益分岐点(ウィキメディア)
http://tinyurl.com/6878wf

 そこで勝間さんが提唱する「万能利益の方程式」は次のとおりである。

利益=(顧客当たり単価−顧客当たりの獲得コスト
           −顧客当たり原価)   × 顧客数


【顧客当たり単価】 利益の源泉。いかに同じ顧客に高い値段のものを
          買ってもらうかということに集中しなければなら
          ない。

【顧客獲得コスト】 最も儲かる商品は顧客獲得コストがタダの商品。
          一度買った人がリピーターになってくれ、しか
          も口コミで他の人にも伝えてくれるような商品

【顧客当たり原価】 購買ポイントが何であるか見極め、そこに十分
          なコストをかけ、それ以外のオーバースペック
          は避けるように努める。

【顧客数】     顧客数の拡大によって顧客1人当たりの固定費
          部分が減る。さらに仕入れ単価も下がるなど
          規模の利益も享受できる。



 方程式のいいところはアバウトな計算でいいということ。
 4つのキーレバーはいずれも管理がしやすい。


 この方程式をカジュアルフレンチ・レストランに当てはめてみる。

 顧客単価(基本コースに食前酒、ワインを加えたくらいの値段)を
8000円とする。

 食材費がおおむね40%とすると3200円
 つまり顧客原価は3200円となる。

 顧客獲得コストも考えないといけない。
 集客のためにホームページをつくるとして、月々5万円でアウトソーシングするとしよう。

 このホームページを見てレストランに訪れる人が一日2〜3人とすると1ヶ月で50人。

 ということはホームページの1人当たり経費は1000円となる。
 ほかにも「ぐるなび」などのポータルサイトに登録して、割引クーポン券などで客寄せしたら、さらに顧客獲得コストが加算される。これも1人当たり1000円となる。

 広告宣伝にお金がかかりすぎるからといって食材費を下げたら今度は顧客数が減るかもしれない。
 また、宣伝しすぎて一気に顧客が増えることになったら、せっかくの常連客が去っていくことになりかねない。

 これはカジュアルフレンチ・レストランに当てはめてみた一例であるが、勝間式方程式を使えば、このように現場感覚で利益計算をすることができる。


 顧客単価は1円でも上げることを考えた方がいい。
 ぎりぎりまで高めに設定すべきだ。
 レストランで5800円か6000円のどちらの値段にするか迷ったときは6000円にする。
 値下げをして質の悪い商品やサービスを提供するのではなく、いかに1円でも高い金額を顧客気持ちよく払ってもらえるか考えた方がいい。


 顧客獲得コストは限りなくゼロに近づけるべきだ。
 ゼロとはこちらが宣伝しなくても買ってくれるリピーターやファンをつかむということだ。
 一度でも商品・サービスを利用するとリピーターにならざるを得ないビジネスモデルを造り上げることが大切だ。顧客の獲得方法の開発は商品の開発にかかる手間ひまと同等かそれ以上の労力を捧げる必要がある。

 顧客原価を小さくするといっても、むやみやたらにケチるという意味ではない。
 顧客が価値を感じるところにはコストをかけ、そうでないところは徹底してコストを省く。
 顧客がどこに効用を感じているのかしっかり分析する必要がある。

 顧客数は増えれば増えるほどいいというわけではない。無理に顧客数を確保すると、サービスの供給が行き渡らなくなる。設備投資して固定費を上げることにもなりかねない。
 これらの4つのキーレバーをしっかり管理する必要がある。


 これまでの記事は、総論的に書かれた章の一部を紹介したに過ぎない。
 本書ではさらに、4つのキーレバーごとに章分けし、その仮説と検証について豊富な実例やデータにより解説されており、個人にとっても、法人にとっても利益が画期的に増えていく黄金ルールが説明されている。

 経営にタッチする人にはぜひお薦めする良書である。
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