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「コメント力」 1,200円
齋藤 孝 筑摩書房 2004年10月10日発刊
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街角で、TVの街頭インタビューに出くわし、いきなりマイクを向けられたとしよう。即妙にコメントできるだろうか。即妙どころか、大方の日本人は口ごもってしまうだろう。齋藤孝氏によると、日本人は「コメント力」がないという。その理由は、学校で習わなかったことも原因として大きいが、欧米人に比べ、日本人はいつでもコメントができるような習慣がついていないという決定的な違いがある。日本人はコメントししすぎると上司を差し置いてとか、奇をてらっているというようなマイナスの評価を受けがちである。その結果、日本では黙っている方が得という風土がつくられてしまった。その点、欧米人は、いつも人と違う自分を出そうと考えている。だから、コメントを求められたとき嬉々としてユニークなコメントを発することができるのだ。これからは、日本人も即妙のコメントができない者はビジネス社会を生き残ることができない時代を迎えたといえる。「コメント力」をつけると、例えば、面接で誰もが答えるようなマニュアルどおりの答えをせずに、ユニークな回答をもって面接官を唸らせることだってできる。また、営業やプレゼンにおいて、自分の考えを端的に、かつ適宜表明できるようでなければ、次は呼んでもらえなかったり、プレゼンする機会だってめぐってこなくなるかもしれない。
齋藤孝。東京大学法学部卒、明治大学教授。専攻は教育学。肩書きは固いが、出版界では名の通った売れっ子作家である。最近では、「声に出して読みたい日本語」がベストセラーになり、話題を呼び、読者の方も知らない方は少ないと思う。本シリーズでも齋藤孝氏の著書を紹介するのは今度で3度目だ。これまで紹介した著書は次のとおりである。
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コメントとは、切れ味のいい発言をいう。インタビューに長々と答えていてはコメントにならない。テレビのスポーツ中継やワイドショーに出演するコメンテーターは、生の素材が投げ出されても、的確なコメントを発して、視聴者をなるほどと唸らせる。コメンテーターは、目の前に繰り広げられる現実をうまく切り取り、コンパクトにまとめ、提供することで、視聴者の理解を早めてあげることを役目にしている。
テレビに出てくる専門家だけでなく、営業や、社内のディスカッションにおいても、コメント力は重要な役目を果たす。コメント力のある人間は、それだけ世の中を見わたす観察眼が鋭いといってよい。デートの時、相手の髪型が変わっていたり、いつもの服装と違っていたりしたとき、即、そのことをコメントしてあげるべきだ。髪型を変えているのに、そのことについて何のコメントも出でこない彼氏だったら彼女は、これからも付き合い続けるか、ちょっと考えた方がいい。もともとコメント力がないのだから、結婚した後もコメントを期待することはできないだろう 「毎日スキルアップ通信」の発行者の妻も、気がつかない無口な夫に、ずっと苦しめられている(^^;
コメントはだらだらした説明であってはならない。直感的に響く言葉でいい。クラッシック音楽がわからなくても、優れてコメンテーターの的確なコメントで、急にクラッシック音楽の聴き方がわかることもある。同様に高級な料理の味がわからなくても、ソムリエの力で、それがわかるようになることだってある。言葉を超える感覚を相手から引き出す力が「コメント力」だ。
「コメント力」は、年齢とともに磨きをかけなければならない。40歳、50歳にもなって、気が利いたコメントのひとつも言えないのは悲しい。リタイアしたあとの人生も味気ない。何を聞いても「ああ・・・」とか「ええ・・・」としか答えない人と残りの人生を歩む配偶者はもっとつらい。「コメント」は人生の後半生のセクシュアリティを維持できるかどうかにもかかっている。「すごい」、「面白かった」では興味を引かない。コメントは相手に「お得感」を抱かせることが大事である。映画を観たときは、そのなかのストーリーを臨場感を持って伝えるため、具体的にセリフをそのまま引用するなど工夫が必要だ。プレゼンテーションのコツと同じだ
「コメント力」を鍛えようと思うなら、日常的にコメントを出す練習をしてみることだ。映画を観たら1行コメントを考える。「面白かった」ではなく、例えば、
「この映画で人生観が変わりました」とか、
「明日から私も恋をしたくなりました」
というようにつくっていく。本を読んだら、ひと言、ふた言コメントをメモしておくのも手だ。人前で話すときは、話す内容を文章にした後、その文章を切りつめ、箇条書きあるいは、キーワードだけに整理していくといった作業をするのも、「コメント力」を磨くための有効な手法であるという。
味に関して、「おいしい」という言葉を使わずに、おいしさを伝えるためにコメントすることは、「コメント力」を鍛える上で大変有効であるらしい。一緒に食べに行って、「おいしいね」では会話が続かない。ここで、気の利いたコメントが出せる人は、大抵メンバーで中心人物になれる人ではないだろうか。漫画『美味しんぼ』では、「まったりとした」という表現が出て流行語にもなった。石塚英彦が使う「まいう!」も面白い。意味はわからなくても、雰囲気や感覚で訴えるのも立派なコメントだ。食べるとき、映画を観るとき、とっさにはなかなか出ないので、途中から、終わったら何を言うか、コメントを考えておくようにするといい。慣れてくると、終わった後に、自然に気の利いたコメントができるようになる。オリジナルティを出したいときは、自分の立場を強調してコメントしてみるのも手だ。誰に対して言うのか、その立場性を頭に入れればユニークなコメントができるようになる。
シュワルツェネッガーがカリフォルニア知事選で遊説中、観衆から卵を投げつけられたことがある。そのとき、シュワちゃんは、すかさず答えた。
「奴にはベーコンの貸しだ」
器が大きくなければなかなか出てこないセリフだ。ベーコンエッグには卵のほかにベーコンも必要だという意味で使ったのであろう。こういう切り返しがとっさに出てくるようになれば一人前だ。
読者から、ボリュームのある内容を毎日書き続けられるのは、速読をしているからかと、よく尋ねられるが、私と同じ答えが、「コメント力」の中でも語られていた。齋藤氏は、本を読むときは、コメントしようと思って読むそうだ。集中して読むから早い。その際、本を書いた当人がもっともエネルギーとかけた部分だけを読み、そこに対して自分の考えをだぶらせてみながら読むという。自分なら、そう考えるだろうか、同じような選択をするだろうかというような観点から読むと、コメントは生まれやすいという。
また、自分の立場を明らかにしながら、説明するとより説得力を増すそうだ。将棋界の羽生名人が小学館漫画賞を受賞した『月下の棋士』に寄せたお祝い文にはこう記してあった。
「将棋という漫画になりにくい題材に挑み、しかも、そこを乗り越えられたのは、やはり作者の熊條さんなればこそと思います・・・とにかく、将棋界に身を置く一人として、”いい人にいいものを描いてもらった”と、心よりこの受賞をお祝い申し上げます」
「漫画の難点を理解していて、将棋のように動きのない難しい題材を乗り越えた」という表現がうまい。「将棋界に身を置く一人として、”いい人にいいものを描いてもらった”も、将棋界の最高峰にある羽生名人の言葉だからこそ千金の重みがあるのだ。
実は私の「毎日スキルアップ通信」に対して、ある読者からお寄せいただいたコメントに惚れ込み、特別の許しをいただいて、宣伝文に使わせていただいている一文がある。これも立場を明らかにした上でのコメントであり、とても説得力がある。このコメントは、自分のメルマガのコンセプトにしていこうと思っている。
「四十代の主婦です。ちょっと堅いお話でも、ぐいぐいと引き込まれて読んでしまいます。どうしてでしょうね、面白いんです。」
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