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   「思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術」

       ■■                   谷原 誠 著    ■■
       ■■        同文館出版(2005.11.11) 1,500円  ■■

 日本人が議論が苦手だ。だから議論にならないよう、何でも丸く収めようとする。あるいは、最初から議論を避けることも多い。

 会議では、上司の責任問題にも発展するような重要な問題は先送りされ、当たり障りのないことばかり話し合われたため、救いようがないまでに組織は弱体化し、

 家庭では、忙しさにかまけて後回しにしていた子どもの教育問題のツケが回ってきて、子どもは言うことを聞こうとしない

 谷原弁護士は「まえがき」で、説得と交渉の技術は、あらゆる人に必要な技術であると強調する。

 もし、これを身につければ、朝、「おはよう」と声をかけて返事もしない高校生の息子の口を開かせることもできるし、会社で顧客であろうが上司であろうが積極的に自分の思うように動かすことができるようになる。

 つまり、説得と交渉の技術を磨けば、人生を切り開いていく強力な「武器」に成り得るのだ。

 
 説得や交渉が難しいのは、相手が簡単に、言いなりにならないからだ。
 相手にも主張したいことがあるわけで、それがぶつかり合い議論になる。
 ときには、言葉と言葉がぶつかり合い、息が詰まるほど感情的になる。
 感情的になりたくないので、当たり障りのないことしか言えなくなる。
 しかし、言いたいことも言えず、感情を押さえていると、だんだん不満が高じていき、結局は、とんでもない場面で爆発して、みんなに迷惑をかけることになる。


 話し合いは、問題が大きくならないうちに行うべきだ。
 耳が痛いことでも、問題を明らかにするために積極的に発言すべきだ。

 そこで、感情的にならないよう日頃から訓練を積む必要がある。
 まず、心構えとしては、勝ち負けを意識しないことだと本書では説く。

 裁判では、金銭問題や愛情問題で憎い相手と戦わなければならない。何とかしてとっちめたいので、どうしても、勝ち負けを意識してしまう。そうなるとお互い感情的になり、よい解決法は見つからなくなる。

 例えば、夫の浮気が原因の離婚訴訟では、給料を差し押さえるなどして、多額の慰謝料を勝ち取ったところで、会社で悪い風評が立ち夫が会社を辞めさせられたら元も子もなくなってしまう。

 憎いもと夫をとっちめるだけが目的ならそれもいいかもしれないが、離婚後の生活費が目的であれば、職を失った夫からの安定した入金は望めなくなるわけであり真の勝利とは言えないわけだ。

 交渉や説得の技術に、勝ち負けはない。感情的になると、勝った負けたに焦点が向けられてしまい、どっちにも良いことはない。決して感情的になってはいけない。何を目的にした交渉なのか、説得して相手にどうしてほしいのか、問題解決に集中しなければならない。

 議論になれば、誰だって感情的になる。そこを感情的にならず、問題解決に意識を集中すれば、必ず議論を有利に進めることができる。

 キケロいわく、
 「何時は生きるために食べるべきで、食べるために生きるべきではない」

 議論をするとき、こちがら求めるものと相手が求めるものが微妙にずれていることが多い。こちらは実を取りたいが、相手は名誉を保ちたいのかもしれない。こちらは子どもの更生を願っているのに、子どもは無償の愛がほしいのかもしれない。

 それらは、たとえふっかけられても冷静な態度を失わず、問題中心に議論を進めていく中で明らかにされていくものだ。微妙なすれ違いを発見することで、お互いが満足のいく解決をみることもあるのだ。

 姉と妹がみかんの取り合いをしてケンカをしている。仲裁に入った者が冷静に両者の意見を聞いてみたら、姉はマーマレードをつくるためにみかんの皮がほしかったのだが、あんまり妹がしつこいので、感情的になっていたことがわかった。このような事例が裁判でも起きるそうだ。


ハーバード大学の研究所で交渉術が編み出された。

 この「ハーバード流交渉術」には4つの守らなければならない鉄則がある。

一、『人との問題とを分離せよ』

  「誰かさんが言うなら許せるが、あいつは許せない」
   ・・・ということは、ままある。しかし、交渉に感情が交じえるのは禁物。「人」ではなく、「問題」にすべての意識を集中させなければならない。言うは易しで、これは、なかなか難しい。大きな志でのぞむとか、訓練して身につけるなど、何らかのアクションを起こさなければ、実現は難しい。

二、『立場ではなく、利害に焦点をあてよ』
  
 上司の立場、年上の立場、買い主の立場、いろいろあるだろう。ところが、この立場というのはやっかいで、あまり固執すると、交渉が先に進まなくなる。あなたの立場がどうであろうと、相手の言い分をよく聴き、妥協するところは妥協して、お互いが納得できる答えに近づけていくことが肝要だ。

三、『行動について決定する前に、多くの可能性を考え出せ』

 交渉の前に、ひとりブレーンストーミングをするなどして、どのような変化にも応じられるよう準備を十分にしておくことが大切だ。交渉の中で、安易に妥協点で落ち着かないよう、想像力を働かせ、後で困ったことにならないか、大事なことを見落としていないか、もっとよい解決法はないのか、検証できるようにならなければいけない。

四、『結果は、あくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ』

 交渉中、人を見るのではなく、争点を取り巻く、状況、市場価格、判例、第三者の意見など、客観的基準を見るようにし、これらと照らしながら、冷静に解決に向けて進めていく姿勢が大事である。


 ハーバード流交渉術は、会社内で行う議論などに大いに適用されるべきだ。
 つまり、相手方にもある程度の理性が求められる。
 ところが、相手が感情のかたまりに化しているときは、なかなか通用しない。
 交渉の世界において感情的になった者に勝ち目はない。そんなときは、特に鉄則など用いずとも、あなたは楽々勝てるだろう。


 交渉前には、ストーリーの組立をしておく。
 交渉に限らず、プレゼンでも、会議でも、仕事で表舞台に立つときは必ず下準備は必要だ。資料も読まず、相手のことも調査せず、話の展開も考えず、交渉の場に出向いてうまくいくはずがない。


 本書では、交通事故の損害賠償を例に挙げている。

 交通事故にあって、怪我をしたとする。通院しているが後遺症が残る。
 そこに百戦錬磨の保険会社の担当者がやってくる。

「過失相殺です。基準でいけば7対3でしょう。休業補償といっても、あなたはまだ若くて給料も高くない。去年の年収からいくとどうみても、130万円でしょう」

 ここが交渉のしどころと、あなたは、
「130万円は安い」と返す。

「私もたくさん案件を持っているので、あんまり関わっていられないんですよ。そうですね。150万円で手を打ちませんか」

 と、まんまとやられてしまう。

 もし、交通事故の本を読み、事前準備をしていたら、

「それはおかしい!慰謝料の相場は80万円で、しかも後遺症なら自賠責で、さらに75万円がプラスされる。自賠責だけでも合計155万円出るのに、あんたの言ってることは無茶苦茶だ」

という具合に、反論できるはずだ。


 交渉で求めたいものは、最初からはっきりしているはずだ。
 一言「○○が欲しい」で済んでしまいそうなものだが、実際は、交渉を始めると、思いも寄らない展開が待っている。
 こちらが予想もしないような条件を出されて、良いか悪いか判断に迷っているうちに、だんだん相手のペースにはまってしまう。

 このため、交渉に入る前は、思いつく限り、相手が出してきそうな条件、こちらが望む代替え案、交渉成立のぎりぎり最低ラインなどを、ブレーンストーミングなどを使って、すべて明らかにしておくべきだ。

 谷口氏は、離婚調停のときに、具体的に次のような妥結ラインを描く。

・慰謝料500万円
・一度に無理なら分割払いして総額を利子分だけ増やす
・夫に生命保険をかけて、自分が受取人になる。
・夫名義のマンションに住まわしてもらい、夫は出て行く 等々


 やくざや、総会屋などが使う手に、恫喝してダメージを与えた後に、急に優しい声で自分に都合のいい条件を出す交渉の手口がある。地方の議会などで、次から次に質問を浴びせ、答えられない幹部をののしり、痛めつけた上で、要求を遠そうとする手法も同じだ。

 これらに対処するためには、交渉の前に、徹底的に予想される展開をブレーンストーミングして想定問答をつくり、頭を柔らかくしておく必要がある。論理思考力があるなら、無理難題の要求の中にはいくらでも論理の破綻が見つけられるので、冷静にそれを崩していけばよいのだが、知に働けば角がたつ日本社会では、なかなかそれが難しい。


 さて、交渉が決裂したときに移る別の選択肢は、必ず用意しておかなければならない。人質事件で、要求が通らないときに犯人が取り得る別の選択肢を思い浮かべればわかることだ。

 それは極端としても、ビジネスの世界において、決裂したときの別の選択肢を用意しておくと、精神的に余裕を持って望むことができるようになる。余裕を持てば、相手の要求に対して「ノー」が発しやすくなる。交渉の前に、これだけは絶対ノーと言おうというような項目を決めておこう。

 何もかもノーでは、交渉は進まないので、初めはノーでも、交渉によって、譲歩しなければならない項目も明らかにしておかなければならない。その場合は、どこまで譲歩できるか「限界点」をあらかじめ決めておいた方がいい。その「限界点」を超えたときは、交渉決裂である。あなたは、用意しておいた別の選択肢を行使すればいい。

 人質事件でたいてい上手くいかないのは、犯人が口ばかりで限界点を定めていないからである。警察は、立てこもる犯人の要求に対し、焦らし、限界点があるのかないかを探る。その駆け引きの中で、限界点があいまいなことを突き止め、強行突破の準備を着々と進めていく・・・

 限界点をあらかじめ定め、決裂の覚悟を決めておけば、交渉相手がどんなに強面であろうと、腰がひけたりしないはずだ。



 交渉は勝負ではない。
 こちらの言い分が一方的に通ったから勝ちというものではない。
 もし、そんなことになったら、相手に恨みの買うだけだ。
 大きな目で見たら、負けと一緒だ。

 それよりも、交渉相手の立場に立った方がなすべきことが見えてきて、交渉はスムーズに進む。恨みっこなしで妥結すれば、今後は良好な関係を維持することもできる。

 谷原氏は、相手の立場に立って交渉する大切さはビジネスだけでなく、家庭でも同じであると説く。

 子どもに勉強しろと言っても、なかなか勉強しない。
 勉強しないと、いい学校に入れないといっても効果はない。
 そこで、子どもの立場に立って考えてみる。
 子どもはパイロットになりたいと思っている。
 それなら、パイロットになるためには、どういう勉強が必要がアドバイスしてあげる。子どもは自分のこととして考えなければいけないので、言うことを聞くだろう。

 相手の立場になって考えるというのは、何も相手の言いなりになるということではない。相手の一つひとつの言葉の裏に隠れた真の要求は、考えてみて、こちらから逆提案をしてみるのも効果的だ。

 ミカンの取り合いをする前に、もしかしてマーマレードがつくりたいのではないか、欲しいのはミカンの皮ではないかなどと、いろいろ考えてみるのである。

 交渉に慣れてくると、事前準備でなく、本番で質疑を繰り返しているうちに、相手の真の要求を見抜き、こちらが即座に用意した代替え案で相手を満足させることができるようになる。


 さて、主張は先にした方がいいか、後にした方がいいか考えてみよう。
 交渉においては、自分の言い分をとにかく相手にわからせたいと先走る人が多い。
 でも、自分が好きなことだけ言って、それで要求が通るなら、交渉の勉強などしなくてもよい。そうはいかないから、交渉術がスキルとして存在するのだ。

 自分の主張を展開するのは、相手が話すことがなくなってからでいい。

 相手の話しているのをさえぎって、自分の主張をするような者に交渉の資格はない。とにかく、相手に全部しゃべらせて、スッキリさせることが大事だ。

 相手の主張をしっかり聞いてあげれば、それだけで相手は気分がよくり、あなたへの信頼度も増すであろう。
この手口は、kougaiも、ときどき使っている(^^;

 相手が興奮してしゃべっているときは、どんどん、しゃべらせることにしている。元気がなくなったら、こちらからたきつけるようにして、さらにしゃべらせるのである。そしてどんなにバカなことを言われても、さえぎらず、批判せず、一生懸命聞いてあげるのだ。面白いことに全部聞いてあげた後は、相手が今言ったことと、矛盾するような要求をしても、すんなり通ってしまうのである。これは、しゃべり出したら止まらないような正確の人にはてきめんに効くやり方なので、皆さんも試してみてほしい。

 kougaiは、ずいぶん昔、仕事でヤクザに脅かされたことがある。
 紙と鉛筆を渡されて、念書を書かないと、ひどい目にあわせるという。
 夜道はいつも月明かりばかりとは限らないというような風流なことを言われた。しかし、そんなことを言われたら、普通反発心が湧いてくる。
相手がヤクザでも湧いてくるのに、これが普通の交渉の場であれば、なおさら反発を買う可能性は高い。

 谷口氏は、交渉に脅しは有効であると本書の中で説明する。
 それは、直接的な脅しではなく、脅しと悟られない巧妙な脅しのことである。

 例えば、経営が苦しくなり、従業員の給料を減らしたいとき、「給料の減額に応じないと辞めてもらう」と、言ったら、必ず反発されるはずだ。

 次のように言うのが正しい。
「給料の減額に応じてくれませんか。今の会社の体力では、これまでの給料のままでは雇用を続けることが不可能です」

 これだって、立派な脅しであるが、聞く側は、そう感じないだろう。
 脅しと感じさせないためには、できるだけ事態を客観的に説明し自分を出し過ぎないように気をつければよいそうだ。



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