|
ルイヴィトンの高級ブランド戦略について解説された本である。
kougaiのように市井の中でつつましく暮らす人間には縁のない高級ファッションの世界の話であるが、高級ブランドの維持・確立のための経営戦略を学ぶことは、ビジネスパーソンにとって自社の製品のプロダクトやマーケティングを考える上で参考になる点が多いと思う。特にブランド力のなさに悩む企業やブランド力を高めたい企業にとって参考になる本である。
銀座並木通り、青山、表参道、丸の内などではブランド旗艦店や直営店が街並みを彩る。これらの目抜き通りを歩けばルイ・ヴィトン、エルメス、シャネル、グッチ、プラダなどを身にまとう人を闊歩している。
本書では、ファッション・ビジネス界のなかでも巨大なブランド帝国を築いたLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)のマルチブランド戦略を紹介している。
ヴィトンのブランド戦略について4P(製品・価格・流通・販促)ごとに分析を行い、その成功の秘密をさぐる。
LVMHは、積極的にM&Aを繰り返しながら、ブランド各社のデザイナーの感性、マーケティング力、販売員のおもてなしの心などの人的資源を結集させ、今ではおよそ50のブランドを抱えるコングロマリットである。
その傘下にはそうそうたるブランド名が名を連ねる。
ルイ・ヴィトンを筆頭に、クリスチャンディオール、ジバンシィ、セリーヌ、フェンディ、ダナ・キャラン、ロエベ、宝飾のショーメ、フレッド、時計のゼニス、酒類のドン・ペリニヨンなどが続く。
本書の第1章では、ヴィトンの4P戦略のうち、PRODUCT(製品)について解説されている。
一般の製品であればコストパフォーマンスを第一に考えることになるが、ヴィトンの場合は、「卓越した品質の製品」「こだわりの品質の製品」「物語のある製品」を求めることになる。
そして、ブランドを守る手入れを怠ることをしない。
ヴィトンの歴史は、偽物との戦いでもある。
偽物を駆除するため、一般消費者には啓発活動を行い、企業には「警告書送付」を行い、偽物の製造販売業者には、「真似できないような独自性の高いラインをつくって商標登録や意匠登録で対抗している。
パリの本社と連携して、ローマ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、香港、上海などに対策チームを置き、国境を越えて暗躍する模倣品の流通ネットワークに対処しているという。
ヴィトンは新商品を投入させたあと、そのまま売り続けて定番商品にするか、山口百恵のように惜しまれながら廃盤させるか、いずれかの方法をとるようにしている。
ヴィトンの職人がつくったアイテムは基本的に定番化させていく方針のようだ
マーク・ジェイコブスなどが率いるファッションのラインにおいては販売数が増え、同じ服を着た人が街で出会わないように戦略的に廃盤にし、新たな製品を投入するようにしている。
ヴィトンは、セカンドラインを持たないようにしている。
ほかのブランドは、低価格商品の品揃えを行ったりするが、ヴィトンは値段を下げてまで広く普及しようという考えはない。
また、ライセンス生産方式もとらない。
他社がヴィトンに一定のロイヤルティーを支払い、ヴィトンの商品をつくるようなことはない。
ライセンスを乱発すると、汗拭くタオルにも、トイレのスリッパにもロゴマークがつくことになる。ライセンスを出せば一時的に大きな収入を生むので、手をつけたら麻薬のようにやめられなくなる。しかし、長期に見れば、ブランド価値はそれだけ目減りしているということだ。
ヴィトンはアウトレット品の発生を禁止している。
一般的にブランド各社は、不良品が発生することを見込んで工場で必要数よりも多めに生産し、余った分をアウトレットに回すようにしている。ヴィトンは生産から販売まで管理が行き届いているのでアウトレット品は出ない。自前で育成した職人が自社の工房でつくっているのでアウトレット品が出る仕組みには元々なっていない。
ヴィトンはニーズ調査をしない。
ニーズをくみ取っているようでは時代の最先端をいくことはできない。
ニーズ以前の気分や風潮のようなものは先読みして、それを製品で表現し、世に問うスタイルをとっている。
ルイ・ヴィトンは高価格であるけれども、高級感を出すために、わざと高く(威光価格)設定しているわけではない。
一つひとつの工程にかかる費用が高いため価格が上昇しているのであって、別に法外な値段をふっかけているわけではないのだ。
過去に、輸入業者がパリで大量にヴィトンの商品を買いあさり、日本国内で法外な値段をつけ暴利をむさぼっていた時代がある。
しかし、ヴィトンの直営店が日本にでき、正当な価格設定を行うようになったおかげで、日本のお客は安心してヴィトンの商品を買うことができるようになった。
ヴィトンはバーゲンセールスをしない。
それは、品質にこだわりがあるからだ。
それに、バーゲンセールスをしないことで、ヴィトンを購入したお客にとって、商品を保有していても値が下がらないという安心感がある。
また、同様の理由でおまけセット販売も行わない。
当然、9万9千円というような「端数価格」の設定もしない。
ヴィトンは、テレビCMを一切行わない。
テレビCMに出すと、カップラーメンの宣伝のあとにヴィトンの宣伝が流れても文句を言えないからだ。
2003年9月に、J-WAVEで9時間かけてルイ・ヴィトンの番組を放送したことがある。
それはルイ・ヴィトン六本木ヒルズ店オープンを記念したものであった。
この場合、9時間も番組を独占するので、話題性もあり、広告戦略に問題はないといえる。
どちらかとうと、プロモーションよりもパブリシティを重視している。
広告費をお払いして宣伝しているというのではなく、記事にしたいとプロポーズされたから取材を受けているのだというスタンスを大切にしている。
|
|