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水煮三国志
■■ 成君憶(Cheng Junyi) ■■
■■ 日本能率協会マネジメントセンター(2005.8.1) ■■
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「水煮(みずに)」は、川魚に唐辛子と山椒がたっぷりかけて煮る四川料理の人気メニューだ。「ピリ辛で風刺を効かせた」という意味で使われている。
「水煮三国志」では、三国志の武将がそれぞれの個性を持ったまま現代によみがえり、ビジョンと戦略でビジネス戦を展開する。
小説としても読めるし、経営学としても読めるスタイルをとっている。
劉備は貧しいながらも、母の強い勧めで長江国際工商管理大学に入学、一生懸命勉強して、学業優秀な劉備は、奨学金ももらい、無事卒業できることになった。
卒業間際に、近くの桃園で学友の関羽、張飛と義兄弟のちぎりを結ぶ。
さらに3人は、大学発ベンチャー企業で成長が著しい「奇妙ヘルスケア株式会社」に見習社員として入社する。
本採用を前に、試験を受けることになる。
社長の董卓は、手に櫛(くし)をのせ、「一週間以内に、この櫛を、百本売りさばくこと」だと採用基準を示した。
受験生達は、今どき櫛など売れるかと、口々に叫んだ。
董卓は、ビジネスの真髄を受験生達に教えた。
過去に同様の試験で、さらに売る相手は、寺の坊さんという厳しい条件で行われたことがあり、3人が実際に櫛を売ることに成功した。3人の名を甲乙丙としよう。甲は1本、乙は10本、丙は1000本売ることができた。
甲は、あちこちの寺をがむしゃらに回り、どのお寺でもお坊さんから怒鳴られ、追い返されながらも、最後のお寺でその努力が認められ、一本買ってくれたという。
乙は、山に登ってくるまでに風でぐしゃぐしゃになった髪のままで仏を拝むのは不敬にあたるので、祭壇の前に櫛を置いて、拝む前に髪をとかせたらいいと住職に説得して買わせたのだという。
丙は、山奥の参拝お寺を訪ね、こんな深い山のお寺に参拝に来るのは敬虔で誠実な老若男女に決まっているので、無病息災のご加護と善行を激励するため、住職が櫛に文字を刻み、参拝客に振る舞ったらどうかと提案したところ、住職は破顔一笑して千本の櫛を買ってくれたという。
つまり、セールスマンは3種類に分かれるという。
甲は、非常にねばり強く、最後に誠意が人に認められるタイプで、
乙は、観察力、推理力が長けていて、いろいろ工夫して販売につなげるタイプ、 丙は、研究と分析を通して、新たな顧客やマーケットを開拓し、大胆な戦略で傑出した成果を生み出すタイプだ。
董卓の説明で会場は静まりかえった。
その丙こそ自分のことだと董卓は明かした。
董卓は、「お客の立場」、「お客が購入してくれる動機」を考えることが一番大事であるとつけ加えた。
董卓から与えられた、櫛を売る試験の成績は散々であった。
劉備も関羽も1本も売れず、張飛は親戚に6本売るのが精一杯。
とても百本も売れる状況ではない。
自分で買うこともできたが、真面目な劉備はそれを拒んだ。
トップは、呂布の999本であった。
劉備、関羽、張飛は試験に落ち、地方の会社に就職した。
呂布は、董卓の会社に入社し、豪腕を発揮し、たった2年でナンバー2までのし上がる。
2年後、級友達は再会し、呂布は劉備達におまえ達はバカだと言う。
坊さんに櫛を売る話など、董卓の作り話だと呂布はばらす。
祭壇で髪をとかすこと自体が不敬に当たるし、参拝客に櫛など配るより絵や書を配るほうが自然ではないかと呂布に言われ、3人はあ然とする。
呂布の成績、999本は入社するため自分で買ったものだという。
董卓と並ぶ、千本にしないところが、呂布の狡猾さの現れである。
董卓の会社は、セールスマンに自ら買わせることで成り立っているという。
当章の終わりでは、次のようにまとめられている。
○「櫛をお坊さんに売る」ような商法は、ある種の人々から熱狂的に支持されている。
○しかし、このようなマルチ商法は詐欺と変わりない。小さな獲物をせこせこと狙らう人々の背景に大きな黒幕がいることに気がつかなければならない。
○起業には公明な信条が必要である。
「徐州電気株式会社」の社長、陶謙(とうけん)は、劉備を高く評価し、彼を次の社長に据えるため、養子にしたいと思っていた。
そのことを劉備に切り出すと、劉備は「社長は勝手に後継者を決めるべきではない」とさとす。
「会社は誰のものか考える必要がある。会社は社長だけのものではない。社員たちのものでもある」
次期社長を誰にするかは総意に基づかなければならないとした上で、劉備は社長に、会社の経営効率を上げるため5つの提案を行う。
○コミュニケーションがとりやすい環境づくり
「協力」、「信用」、「楽しさ」が共有できる職場
○メンバーであることのプライド
組織の一員であることへのプライドがもてる職場
○メンバーの能力と仕事の役割がぴったりマッチさせる
適材適所が徹底されている職場
○チャレンジングな目標設定
少々高めの目標を設定し、全社で取り組む気運づくり
○正しい業務評価
客観的な基準による評価。その結果が、配属、報酬、教育訓練に正しく反映される職場
劉備は、陶謙の跡を継ぎ、「徐州電気株式会社」の社長となり、忙しい毎日を送っていた。
ある日、呂布がひょっこり劉備のところに訪れた。
呂布は、董卓の愛人貂蝉と三角関係に陥り、董卓を殺傷、その後、刑に服していたはずだ。
聞くと、出所したという。そして自分を雇ってくれと言う。
悪徳高いといえ、呂布のビジネス手腕は国士無双である。
劉備は愛している女性と結婚することもできないくらい忙しい毎日を送っており、経営の一切を任せられるくらいの片腕が欲しい時期でもあった。
揺れる劉備の心を推し量って、部下の陳登が、劉備に対し助言を行う。
陳登は、劉備の忙しさに問題があるという。
「目の回る忙しさの原因はそもそも社長にある。何もかも背負い込みすぎる。社長は朝から晩まで子ども達の面倒をみるヒヨコのお母さんとおんなじ」
「社長は、心のどこかに社員に嫌われないという思いがあり、媚びをふっているところがある」と、耳の痛い言葉が連続して陳登の口から出る。
「史記」に有名な話がある。「項羽と劉邦」の時代の話だ。
韓信は向かうところ敵なし、猛烈に強い将軍であった。
韓信は劉邦の忠実な配下である。劉邦は、自分と戦えば、必ず韓信が勝てるのに、いつまでも凡庸な自分に従う韓信が不思議でならない。そこで韓信に思い切って聞いてみた。
劉邦「私はどれくらいの兵を率いることができると思う」
韓信「漢王におかれては10万でしょう」
劉邦「おまえはどれくらいだ」
韓信「それ以上です」
劉邦「それなら、なんでおまえが俺の臣下なのだ」
韓信「漢王は『兵』を率いる以上に、『将』を従える力を持っているからです」
陳登は劉備に対し、「権限委譲」で乗り越えなければならない壁を教える。
1従業員を信じない。
部下のやることに気が気でならない。
それなら、信任、激励、育成を通して、部下を信頼に値する人間に成長させればよい話だ。
2コントロール不能になることが恐い
結果が見えなくなると思っている。
それについては、定期的な進捗状況報告などコミュニケーション方法をしっかり見直せば大丈夫。
3自分の重要性を知らしめたい
部下の方が実務の多くを知っている。あっさり認め、あなたは「将」を率いる「将将」となるべき。
4自分は他人よりできる
部下に仕事を教えるには3時間かかる。自分でやれば30分でできる。
こうした人は、一生全部自分でやらなければならないハメになる。
あなたは「将軍」ではなく、「将将」となるべき。
5自分の地位が弱まる
権力を譲りたくないと思うのは間違い。譲れば譲るほど自分の地位はさらに向上し、マネジメント業務に集中できるようになる。
その後、劉備は呂布に会社を乗っ取られ、物語はまだまだ続きます。本書は450ページに及ぶ大書で、まだ3分の1も進展していません。
長くなりますので、紹介はここまでとします。
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