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「物語力」で人を動かせ!
著者 平野日出木
発行 三笠書房 2006.3.25
価格 1,400円
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この人の後に付いていこう。
そう思わせるリーダーには何かがある。
論理力や決断力に優れているだけではだめだ。
夢を語る力がなければいけない。
いま、世界のリーダーたちは、「物語」を熱く語り、お金や人を動かしている。
経営学の先進国、アメリカでそのことにいち早く気づき、「物語」で人を動かす画期的なノウハウが開発されるようになった。多くの経営者、ビジネスパーソン、技術者、科学者、法律家が、これまでの「論理的思考力」から、新たなノウハウ「物語力」を取り入れようとしてしている。
日産を見事に再建したカルロス・ゴーンは収支計算だけに目がいく非情なコスト・カッターではない。
危機感を社員と共有し、日本人以上に社員たちと心を一つにまとめ、経営改革に取り組んできた結果、日産をV字回復に導くことができたのである。
カルロス・ゴーン社長は、誰もが参加したくなるような日産復活の物語を、社員たちにわかりやすく語り、やる気を高めていった。
「いかなる革命も人間中心でなければならない」が彼のモットーである。
【参考】 カルロス・ゴーンが語る「5」つの革命
⇒ http://johou.net/syoseki/carlos5nokakumei.htm
物語は、
命令でなく影響力によって人を動かすことができる。
社内プレゼンにおいても、上司に十分、納得させることができる。
商品をの価値を押しつけでなく、顧客の心にしっかり刻みつけることもできる。
本書は、豊富な事例をもとに、「物語力」をテクニックとして身につけることができるようになっている。
今は、プレゼンで誰もがパワーポイントのようなツールを使って、わかりやすく説明しようとする。
確かにわかりやすいのだが、それでも納得させることができない。
前回、大人のプレゼン術を特集したときに、複数の読者から、上司や役員を納得させるために効果的な方法はないか尋ねられたが、「物語力」で、現状を打開することができるかもしれない。
「物語法」とは、いわゆる「おはなし」、すなわち物語形式で相手に印象づける技法である。
聖書が、物語形式でなく、論文で書かれていたら、世界中に広まらなかっただろう。
「論理」は、主張が真か偽か、聴き手が判断しなければならない。
そうなると、自然に身構えてしまう。知らず知らずに対決姿勢になってしまうのだ。
「物語」には、聞く者に対決を迫らない。心を開いて聞いてくれるだろう。
世界銀行は、国際連合の専門機関として、金融秩序の維持、発展途上国への支援など重要な責務を負っている。
90年代後半、スティーブ・デニングという人が、世界銀行の中にナレッジマネジメント(「知識」や「情報」を共有するシステム)を構築しようと考えた。
彼はナレッジマネジメントの重要性を内部でプレゼンするが、誰一人耳を傾けてくれようとしない。
このためスティーブは、窮余の一策として、次のような「物語」を用意した。
『ザンビアの小さな町に住む保健師が、アトランタにある疾病対策センターのホームページにアクセスし、マラリアの治療法について疑問を解決した。最貧国ザンビアの、しかも首都から600キロも離れた町でも、ネットで貴重な情報を得ることができるのだ。しかし、最も衝撃的なことは、貧困問題についてあらゆるノウハウを蓄積する国際機関である世界銀行が、この話に全然、関わっていないことだ』
この短い物語は、世銀に勤める行員たちの心に火をつけた。
ナレッジマネジメントが、世銀内に一気に浸透した。
自分たちには、それ以上に支援できる力を持っているというプライド、職場の沈滞ムードを払拭したいという願望が、ひとつの「物語」によりわき起こったのだ。
日本では、2009年から「裁判員制度」が始まる。
米国ではすでに、専門家でない陪審員が判決に寄与する制度が浸透している。
その米国で、原告、あるいは被告側は、素人の陪審員たちに対して、自分たちの主張を受け入れさせるために必死に説明する。
特に刑事事件に関しては、素人の陪審員たちはどうしても先入観を抱きがちだ。
それを崩すために使われるのが「物語」であるそうだ。
NHKの『プロジェクトX〜挑戦者たち』は、残念ながら昨年12月をもってシリーズが終了してしまったが、名もない挑戦者達の「物語」は、観る者に感動を与え続けた。
【窓際族が世界規格を作った】2000年4月2日放送
西田敏行主演の「陽はまた昇る」として映画化されたのでご存じの方も多いと思う。西田扮する日本ビクター本社の技師高野鎮雄は、本社のお荷物と言われ続けている横浜工場に転勤を命じられる。高野に与えられた使命は従業員のリストラ。高野は従業員をリストラするどころか、本社に無断でVTR開発のプロジェクトを立ち上げる。紹介すると長くなるのでここで止めておくが、プロジェクトXは、窓際族、失敗、挫折、孤独・・・等のマイナスの状況から、不屈の精神と努力で立ち上がってきた男たちが描かれ、多くの日本人たちに勇気と感動を与えてくれたドキュメンタリー番組である。
「陽はまた昇る」
出演: 西田敏行, 渡辺謙, その他。
監督: 佐々部清
http://tinyurl.com/jw234
物語の構成は、いたって簡単である。
「シナリオ」作成法の本には次のように書かれているはずだ。
主人公は、「金銭あるいは地位的な成功」、「恋愛の成就」、「平和な家庭の構築」など夢をもって登場する。
ところが、主人公の夢を阻もうと、様々な「壁」が立ちはだかる。「敵」、「ライバル」、「病魔」、「出生の秘密」など、これでもか、これでもかと主人公を襲い、夢は今にも崩壊しそうになる。
しかし、主人公は不屈の精神で、苦難を乗り越え、ひとつずつ、「壁」をクリアしていく。その過程で、観る者もすっかり主人公に感情移入して、心の中で声援を送る。
やがて、主人公にも視聴者にも喜び、安堵、感動をもたらすクライマックスが訪れる。
「異性にモテる」ためのスキルが流行っている。
身だしなみ、表情、コミュニケーションから心理学、催眠術に至るまでバラエティに富んでいる。
どういう人がモテているか、まわりを見渡してほしい。
頭がよく、小難しい言葉をたくさん知っている人がモテるわけではない。
優しくて、細やかな気配りができるとしても、コワモテよりはいいかもしれないが、それだけでモテるわけでもない。
見た目もアテにならない。
もっと簡単にモテる方法がある。
それは、ドラマの主人公のように生き方ができる人である。
チャレンジングで、人の嫌がる仕事を進んで引き受け、どんなに大きな壁が立ちはだかろうと、まっすぐ突き進み、失敗して倒されても、再び起きあがり、歩み出す人々である。
誰もが大なり小なり、課題をかかえている。
弁は立つものの、降りかかる火の粉を払いのけるばかりで、リスクを背負おうとしない者と、寡黙であっても、一生懸命、課題に立ち向かっていく者を比べたとき、異性であろうが同性であろうが、大抵の人は後者を好きになるはずである。
「物語」を前進させる原動力は、主人公の「夢」と、それを阻もうとする「障害」のせめぎ合いである。
脚本家養成者のロバート・マッキー氏は、ビジネスパーソンや弁護士に「物語法」を教えている。
その教えに従うと、「あなた」も物語の主人公になれる。
■あなたの願望は何か
物語は、主人公の立場が圧倒的に不利な状況に置かれている場面から始まる。
厳しい状況にもかかわらず、誰もが実現は無理と思いたくなるような願望をかかえている。
■あなたの願望追求を妨げる障害物は何か
力量不足、不安、確信のゆらぎ、周囲の反対などいろいろある。
■障害を乗り越えるために、どのように決意し、行動するか。
苦難の中での決断こそ、価値があり、みんなの関心を集める。
そこで、勇気を示すか、卑怯さを見せるかで、以後のストーリー展開は大きく違ってくる。
好きな人と向かい合ってごきげんをとるのもいいが、夢を求める主人公のような生き方の方がもっと魅力的に映るのではないだろうか。(仕事が忙しいことを言い訳に、目の前の課題から逃げることとは違う)
さて、プレゼンでも使えるストーリーの展開は次のとおりになる。
□誘因(物語で最初に起きる事件)
平穏だった主人公に突然ふりかかる。
□紛糾(絶体絶命のピンチに追い込まれる)
事件後、何とか事態を改善させようとするが、何度も障害があらわれ、主人公の行く手を阻む。ドラマの中心部分である。ドラマとは「葛藤」の意味である。
□最終決断
主人公の最終決断によって、物語は大きく展開する。
□クライマックス
最終決断後にとった行動でいっきにクライマックスが訪れる。ドラマを観る者の緊張感も最大に高まる。
□解決
クライマックスの余韻を残すため、幸せをつかんだ主人公の後日談は物足りないくらい短い方がいい。
聞き手に対して、こちらが語る「物語」に引き込んでしまえば、しめたものだ。
抽象的な言葉はできるだけ避け、「人の行動」を写し取るような描き方が効果的だ。
話の中で、人と人の会話を感情を込めて再現してみると、よりリアリティを増すことができるそうだ。
プレゼンや記事に「物語」を仕込むことで、読み手や聞き手に対し、深い感動を残すことができる。
受け手に対して、スムーズに"感情移入"させるためには、「V字型」のストーリーが有効であるそうだ。
V字型とは、現代⇒過去⇒現代と、バック・トゥ・ザ・フューチャーのように物語の時間軸を操作して、ストーリーを展開させる方法である。
例えば、トリノでショートプログラム3位をキープした荒川静香選手が、フリーに出場する場面(=現在)から始めるとする。
そこでいったん時間軸を止め、ここに至るまでの経歴を紹介するため、【過去】にさかのぼり、いろいろなエピソードを披露した後、また【現代】に時間を戻し、フリーの演技で、金メダルを獲得するまでの場面を再現するといった手法である。
過去の話では、普通のサラリーマン家庭の子として生まれ、5歳でスケートを開始、衣装は母親の手作りだったという話もいい。
2002年のソルトレイクオリンピックには出場できず、サンドイッチのチェーン店「サブウェイ」でアルバイトをしていた話も使える。
このV字型の「物語」はスポーツ記事でよくみられる。
すでに多くの読者が結果を知っているときは、その結果を繰り返しても、感動を深めることはできない。
そこで、話をいったん過去にさかのぼらせ、選手の育った家庭の話や苦労話を織り交ぜると、選手に対して読み手の親近感がぐっと増し、再び現代に戻すと、何度も聞いた結果ではあるけれど感動してしまうといった方法をとるのである。
このV字型はスポーツ関係だけでなく、政治、経済の記事でもよく使われている。
最初の読者の関心を振り向かせる話をぶつけ、先が知りたい気持ちを喚起させたところで、いったん話を過去にもどし、面白いエピソード、出来事を交えながら、そこに至った経緯のようなものを説明する。読者の関心はいやが上にも盛り上がる。そして、また現代もどり、話を前進させるのである。
トヨタの御曹司(豊田章男の物語)
【現代】
日本市場、米国市場ともシェアは高いものの今後の伸び率は期待できない。
中国はトヨタの拡張計画にとって極めて重要な国と位置づけられている。
豊田創業者のひ孫にあたる豊田章男氏は中国で日本国外生産量の10%に当たる25万台を生産するつもりでいる。
【過去】
豊田章男氏は、米国でMBAを取得した後、1984年にトヨタに入社。御曹司ということで上司のいじめにあう。
2001年、章男氏は中国担当になる。
その当時は、中国はまだ最重要地域ではなく、"実績よりも野心が勝る御曹司をかくまう安全な場所"であったからだ。
御曹司は長春に拠点を持つ「第一汽車」を買収。マネジメントの抜本改革にも取り組み、生産能力を増強。豊田氏の考えた新経営システムは、中国のCEOらにも受け入れられ、生産力は順調に伸びている。
【現代】
章男氏は言う。
「自分はまだトヨタ社長としてふさわしい実績を出していない」
しかし、現在において、「中国」、「豊田章男」のいずれも、トヨタの将来にとってかかせないキーワードとなり、大きな期待が寄せられているところである。
下の記事は、新製品発表の広報資料である。
このようなマスコミ向けの広報資料は、毎日、山のように発表されている。
その中から、大きな記事にするか、ベタ記事にとどめるかは、マスコミの判断次第である。
ちょっと長いが、さっと目を通してほしい。
▼マイクロソフト、日本発のOfficeアプリ「InterConnect」
│
│マイクロソフト株式会社は、Microsoft Office Systemの一部を構成する新
│たな製品として、パーソナルリレーションシップマネジメントソフトである
│「Microsoft Office InterConnect 2004」の開発を表明。同時に、日本国内
│を対象にしたβプログラムの提供を開始しました。
│
│「InterConnect 2004」とは、名刺を多用する日本独自の商習慣にあわせる
│ため、日本市場で企画・開発された電子名刺交換ソフトです。
│主な機能として、Outlookの電子メール機能と 電子証明書を利用して、電子
│名刺という新たなメディアを相手と交換することができるほか、自分の肩書
│きなどに変更があった場合には、一度電子名刺を送信した相手であれば電子
│証明をもとに、オンラインで新たな名刺データを送信することで、相手の情
│報更新が簡単に行なえます。そのほか、名刺の人物にまつわる場所や時間の
│メモ書き、慶弔情報、ミーティングの議事録、経歴、メールのやりとりの履
│歴などの情報も一元的に管理できます。
│
│日本では、2004年第3四半期の発売を予定していますが、価格は未定。
│現在、製品出荷に先立ち、試用と評価を目的としたInterConnect 2004プレ
│リリース版および、電子名刺の閲覧などを目的とした正式版である「Inter
│Connect Lite」を、それぞれ無償でダウンロード提供しています。
*SOHOシンクタンクメールマガジン「コラボ@21」Vol_66より抜粋
昨日、仕事の関係で、ある団体の国に提出する企画書を読ませてもらったところ、・・・これでは予算獲得は難しいだろうねと知人と話したところである。ろくに書けていない企画書はざらで、その点、上記のマイクロソフトの資料は5W1Hもしっかり書けており、ロジカルで、申し分がない。よくできている。
でも、「名刺管理ソフトなんか、ずっと前からあるじゃん」と思っている記者たちのハートに火をつけることができるかとなると、別問題である。
事実、この発表を大半の新聞は無視した。翌日1誌だけが140字の簡単な記事を載せるにとどまった。
著者の平野氏によると、この記事には、コンテンツ(情報の内容)はあっても、コンテクスト(情報以外の状況、脈略、雰囲気など)がないという。
次のような記事にすると「コンテクスト」が含まれているといえるのだそうだ。
【「電子名刺」−日本の習慣、世界へ発信】
人事異動があったら「電子名刺」を送信すればOK
そんなソフトをマイクロソフトが開発した。
日本独特の慣習を世界最大のソフトメーカーの事業にしようとしたのは、日本法人の久保健さん(39)を中心とする約30人の開発チームだった。
これも長くなるので、続きは概要だけ述べる。
この後、久保氏たちが、名刺の重要性を理解できない米本社の幹部とのやり取りのため訪米が30回に及んだというエピソードが紹介される。
また、名刺をもらったときに、相手の顔を忘れないよう、「ひげ」とか「メガネ」と書き込めるようにしとという開発プロセスの話も盛り込まれている。
「4年間の努力が実った。世界で3億人が使っている「Microsoft Office」ブランドで発売されることが決まったのだ」と締めくくられる。
同じ素材でも開発経緯まで含めて発信すると、ここまで記事は変化する。
コンテクストの基本は次のとおり
1目標を設定
2いくつもの障害を乗り越えて
3最終的に成功
"風の中のすばる 砂の中の銀河〜♪"
中島みゆきの地上の星(プロジェクトX〜挑戦者たちの主題歌)が聞こえてきそうだ。
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「物語力」で人を動かせ!
著者 平野日出木
発行 三笠書房 2006.3.25
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