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博報堂出身の傑出した人材に佐藤可士和(かしわ)氏がいる。
彼が手がけた仕事は、スマップのアートワーク、キリン極生の商品開発及び広告キャンペーン、TSUTAYA、ファーストリーディング、楽天、国立新美術館など幅広く、デザインにおける優れた創造力に対して多方面から評価を得ており、これまで毎日デザイン賞、東京ADCグランプリなど数々の賞を受賞している。
そこで、彼が著した「佐藤可士和の超整理術」を紹介する。
佐藤氏は本書のなかで、クリエイティブな仕事はゼロから生み出す発想力ではなく基本的な「整理術」から生まれると説く。
アートディレクターと整理術は一見、結びつかないように思える。
しかし、佐藤氏は仕事や人間関係における本質的な問題解決のための根底にあるのが整理術であると考えている。
佐藤氏は、グラフィックデザインだけでなく、商品開発から企業や教育機関のブランディングまで幅広く手がけている
例えば、キリンの発泡酒「極生」の商品開発においては、ビール代を節約するために仕方なく飲む安い発泡酒というネガティブなイメージから抜け出すために苦心している。
「コクが足りない」⇒「ライトでさわやかな飲み口」
「ビールの廉価版」⇒「カジュアルに楽しめる現代的な飲み物」
ポジティブなイメージに変換した上で、これらを簡潔でクールなパッケージで表現する。色は青だけを使い麒麟のイラストと商品名だけが印刷された「極生」のパッケージを思い出してほしい。
「極生」だけを強調し、テレビCMはいっさい打たず、グラフィック媒体のみを使って広告を展開したそうである。
これらの戦略は佐藤氏が個人で考えたわけではなく、クライアントから問診のごとくヒアリングを重ね、相手の抱える課題や伝えたいことをきちんと「整理」しながら練り上げた戦略であるそうだ。
世の中は混沌としている。
情報が多すぎて、現状の把握が困難となってきている。
広告人にとって注意しなければならないことは他者の表面的な分析に振り回されることである。手法にこだわりすぎてぱっとしない広告が多いのはそのためだ。
広告の本来の目的に立ち返られなければいけない。
最初に行うのは、クライアントと一緒になって何が問題なのか状況を把握することである。
例えば、発泡酒を売り出すことになったキリンが相談に来たときに、発泡酒を取り巻く状況を一緒になって分析してみた。発泡酒誕生の背景にバブル崩壊があり、リッチな商品より廉価な商品に人気が集まった時代で、高級車よりコンパクトカーが売れる時代であった。すでに各メーカーが発泡酒を売り出しており、ビールの廉価版として定着していた。キリンは競合商品がひしめくなか、10円安い新商品「極生」を売り出そうとしていた。
次に行うのは、ヒアリングや調査によって集めた情報を整理することだ。
バラバラの情報を整理するうちに課題を見つけることができる。
発泡酒がビールであることに変わりがないため安さだけを強調される結果となっている。そのため、発泡酒独自の立場を築くことが重要課題であることに気づく。
課題を見つければ、問題の半分は解決したようなものだ。
ビールの廉価版からの脱却することが方向性として決まった。
"カジュアルに楽しめる現代的な飲み物"
"ライトでさわやかな飲み口"
キリンの極生は、こうして生まれた。
時代に変化をもたらすのは機械でなく人間だ。
独創的な技術も商品もすべては「人間の知恵」から始まったものだ。
「博報堂宣言」により博報堂の社員は人間性を磨いてきた。
広告の対象は、消費者である前に生活者であることを教えられた。
広告マンは企業と生活者のまん中にあって、両者にとって何がよいのか考えなければならない。
顧客の喜びを自分の喜びと感じるまでぴったりと寄り添う。
代理業ではなく、パートナーという意識を持つように心がけるのだそうだ。
整理術には3つのレベルがある。
一つめは「空間のレベル」で、机まわりなどをきれいにするための整理術だ。
もっともポピュラーで、簡単である。整理術の基本であり、大切なものを見極める訓練にもなる。
二つめは「情報の整理術」で、テキストや画像などを整理して、情報同士の因果関係をはっきりさせていく過程だ。
三つ目はもっとも高度な「思考の整理術」である。
人の頭の中を、うまく引き出して組み立てる方法である。
佐藤氏はクライアントに問診を重ね、徐々に核心に迫るようにしている。
思考の「見える化」に成功すれば、その難易度は「情報の整理術」ぐらいまでに下がる。相手の言いたいことも自分の言いたいことも明確になる。
コミュニケーションはグッと円滑になる。
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