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6月16日~6月20日(毎日スキルアップ通信で紹介)


   セルフトーク・マネジメントのすすめ
  
鈴木 義幸 価格:¥ 1,575(日本実業出版社2008.05.01)
                    

「どうすれば緊張や不安に負けないようになれるか?」
「どうすれば自分を思うようにコントロールできるか?」
「どうすれば自分の実力を常に発揮できるようになるか?」

 誰もが最初から思うように力を尽くせるものではない。
 前回、人前で上がらずにプレゼンできたからといって、今回もうまくいくとは限らない。

 kougaiも500人もの聴衆を前に堂々とコーディネーターを務めたこともあれば、たった30人ぐらいを前にした自己紹介の席で緊張してしどろもどろになったこともある。

 人の感情というのは思うようにコントロールできないものだ。
 その謎を解き明かし、常に最高の力を発揮できるようになる方法がある。

 今週紹介する「セルフトークマネジメントのすすめ」はその問いに見事に答えてくれる書である。

 本書に書かれていることを毎日、実践することで、面接、スピーチ、スポーツなどの場面で納得のいく結果を出すことができるようになるはずだ。

 セルフトークとは、日本語に訳せば「自分の中の会話」である。
 「会話」は他人だけでなく、自分との間においても感情や行動に重大な影響を及ぼす。
 「会話」の形を変えるだけで、人は大きく変わることができるのだ。

 ある会社に、部下に対してときどきかんしゃくを起こす事業部長がいた。。
 彼は、部下が約束した時間を守らず遅れて来ようものなら「許せない」という感情が爆発して周囲にとどろくような怒鳴り声を上げてしまう。

 どうしたらその性癖が直るのか部長から相談を受けた筆者の鈴木氏は、「許せない」という心の中のセリフの代わりに「何があったのだろう?」と意識して発するようにしなさいとアドバイスした。

 その日から部長は部下に対して自分の息子にでも対するように「何があったのだろう?」と内側で発するように努力した。

 すると、二度と大爆発を起こすことがなくなったという。
 つまり、部長の大爆発のスイッチとなっていた「許せない」というセルフトークが「何があったのだろう?」に変わったことで上司として気遣いができるようになったのだ。


 セルフトークは、自己のアイデンティティ(他人からこのように見られたい)から生まれる心の中の言葉だ。

 甲子園球場や東京ドームで何万人ものファンに囲まれ「ここで打たなくては・・・」「ここでもし三振したら・・・」という言葉が出てくるのは、自己のアイデンティティを守るためである。

 そして、「実際の私」と「自分のアイデンティティ」の間にギャップが生じたとき、人はものすごい不快感を味わう。

 そのとき生じたギャップがトラウマになるときがある。
「どうしたというんだ」「なんでオレが・・」

 前回は人前ですらすらプレゼンできたのに、今日は人前でコチコチ上がっているというのは、悪いセルフトークで心が満たされたために起きる現象である。
 
 自殺者が増えている。これもアイデンティティと現実の自己との不一致によるものだ。
 たぶん、心の中はマイナスのセルフトークで満たされていることだろう。



 誰だって自分をコントロールできるようになりたい。
 そのために「行動」や「感情」を変えようとするノウハウは世にたくさんある。
 いろいろ試してみた方もいるはずだ。

 「まずは行動だ」
 「でも、行動に移せないから悩んでいるのだ」

 「それでは感情を変えろ」
 「わかった。感情を変える」

 テレビドラマならここで主人公が心を入れ替えてハッピーエンドになるところだが、実際の人生においては、その後もありきたりの日常がずっと続き、次第に感動も薄れ元の自分に戻ってしまう。

 「それならアファメーション(自分に宣言する肯定的な言葉)でいけ」
 「わかった。前向きに考える」

 人間には「ダブルハート」がある。
 前向きなことを言った瞬間に、ほんとはできないという疑いの心も生じるのである。
 
 人間はプラスとマイナスのセルフトークを繰り返す。

 セルフトークと感情は、前頭葉でしっかり結びついており、プラスのセルフトークを繰り返すことによって、行動の要因となる感情を変えていくことができる。

 「セルフトーク」こそ、自分をコントロールする最良の方法であると筆者は主張する。



テニスのコーチが生徒に
「また失敗した!」
「もっとよくボールを見て」
「もっと足を動かせ」と教えても、生徒はなかなか実力を発揮できない。

 セルフトークにはプラスのセルフトークとマイナスのセルフトークがふた通りある。

 人をコントロールしようとするセルフトークはかえってマイナスになる。
 よいコーチは生徒にマイナスを指摘するのではなく、潜在能力を解放しようとする。

「今からぼくがボールをトスするから、ボールが最後にバウンドしたあとに、縫い目をよく見て、どういう回転をしているか、僕に教えてくれないか。打つことは特に考えなくていい」

 こういう教え方をされると生徒は、驚くほどなめらかにボールを打てるようになるのだそうだ。

 この教え方にはコーチングとは何かという命題が隠されている。
 人の心を固くさせるマイナスのセルフトークを「セルフトークA」
 ポジティブな感情、反応を導くセルフトークを「セルフトークB」と本書では定義している。

 ユダヤ人であったため、ナチスドイツの収容所に入れられた心理学者ビクター・フランクルの話は、毎スキでもたびたび紹介した。

 フランクルは看守からひどい拷問にあい、家族も同じ収容所で亡くすというひどい仕打ちに遭いながら彼は感情に振り回されず理性で対応することができた。

 このとき、もし彼の中で「セルフトークA」を発していたらおそらく収容所を出ることはできなかったであろう。「セルフトークB」を発したからこそ自分を見失うことなく、終生、ユーモアとウイットを忘れることがなかったのである。

 参考:毎スキ記事「2008.1.8(人生の主導権を握る)」
 http://archive.mag2.com/0000130996/20080107090000000.html?start=100

 セルフトークAは感情・反応で起きる言葉だ。
 セルフトークBは理性・対応を起こす言葉だ。



 セルフトークは変えることができる。
 ネガティブなセルフトークAをポジティブはセルフトークBに変えることができる。
 意識的に創り出したセルフトークBにより、自分の意識や行動をコントロールすることができるのだ。

「失敗したらみっともない」
「こんなに人がいるのならもっと練習してくればよかった」

 これらはセルフトークAである。
 不安や緊張を生み出すセルフトークAを理性により対応可能なセルフトークBに変えていく。

 これはさほど難しいことではない。常に意識すればよい。
 今、セルフトークAを発していないか、たえず自身をチェックすることだ。
 Aを発していると気がついたら、直ちに自分への質問をBに変える。

「この忙しいのに、何で会議に出席しないといけないんだ」
       ↓
「この会議を建設的なものにするために、何ができるんだろう」

というようにプラスの質問に変える。

 問題をかかえた部下に手を焼いているのなら、その部下の背景を考えることにする。
 部下が感情あるいは威圧的な態度に出たとき、動揺するのではなく、相手の背景を探るセルフトークBを発する。
「この人はなぜこんな態度をとっているのだろう?」

 どんな人と向き合うときも相手の背景を考え、セルフトークBを発することができるようになれば上手くコミュニケーションが取れるようになるのでぜひ実践してみてほしい。
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