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スタバではグランデを買え!
吉本佳生(ダイヤモンド社 2007.10.15刷)
価格:¥ 1,680
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スターバックスが近所にできたので、買い物帰りに妻とたまにそこでお茶するようになった。
注文をするときにサイズを聞かれ、言葉を思い出せなくて、「まん中」と恥ずかしげもなく答える。中年力の威力であろう。
でも、これからはこの本のおかげで迷わず「グランデ」と答えることができそうだ。
もちろん、この本はそれだけの効用ではない。
私たちが、生活する上で、どこか心に引っかかりのあるモノの値段について、実にわかりやすく説明してくれる本で、世の中の経済の仕組みがわかるようになっている。
また、それだけでなく、顧客の行動原理というものがよく理解でき、ビジネスのヒントにも活かせるような内容となっている。
たとえば、ずっと心に引っかかっていたのが、ペットボトルの値段である。
私が住んでいるマンションの玄関からすぐに出たところにジュース販売機が置かれていて、値段は150円する。
歩いて3分のところにコンビニがあり、そこで買うと136円でちょっぴり安い。
ところで、車で5分(歩いても12,3分なのに車で行きます(^^;・・)ぐらいのところに、スーパーがあり、そこで安いときに買うと98円ぐらいで買えたりする。そうでないときも、110円から120円ぐらいで買える。
そのスーパーにはよく買い物に行くのだが、買い物を妻に任せ、ときどき外のベンチでひなたぼっこと決め込むことがある。ベンチのそばのジュース販売機で120円の缶コーヒーを飲む。店の中で買えば98円で売られているのにと思いながらも高い方を飲む。
同じモノなのに違う値段で売られている例はたくさんある。
高いモノについ手を出してしまう自分にもやもやしたものを感じていたのだが、この本の第1章を読むとスッキリできるようになっている。
そこには「取引コスト」という考え方が介在するからだ。
簡単に言えば、私たち消費者にかかる「もろもろの手間」のことだ。
すぐそばにある自動販売機ならすぐ買える。
スーパーの場合は、車ででかければ燃費がかかるし、歩いていけば時間がかかる。
お店で買えば、レジを通さないといけないので、列で待たされる心理的負担までかかる。これらの取引コストをモノの価格に合算すれば等しくなるという法則が働いているのだ。
あまり大きな声で言えないが、ハイビジョンのテレビで見ると画面や音楽がやたらにきれいであることを知ったのは、確か3年ぐらい前で、世間一般よりずっと遅かったと思う。
それまではアナログのテレビをずっと見ていた。
ソニー製のテレビで15年ぐらい見続けた。
店で薦められて液晶テレビを買った。
スイッチを入れて、その美しさと音のきれいさに妻と2人で感動したものだ。
それから、わが家は急ピッチで家電のデジタル化が進んだ。
それにしても、薄型テレビとハードディスクレコーダーの価格の下がり方はすごい。
後で買えば買うほど、得するようにできている。
はじめてわが家が液晶テレビを買ったときの画面のサイズは26型であったが、それから2年後に買い換えた37型の液晶テレビの方が安かったと記憶している。
家電製品は各家庭への普及が進むほど、価格が下がる。
これは、生産規模が拡大すると「1台当たりの生産コスト」が下がるという原理が働いているからだ。
モノの生産に必要な経費は、固定費と変動費に分けることができる。
固定費は工場の建設や大型機械の設置にかかる費用で、その工場で生産量が減ろうが増えようが費用の額は一定なので固定費と呼ばれている。
変動費は原材料費や燃料費などで生産量が増えるに従い、費用も増える性質の経費だ。
つまり生産量が増えるにしたがい変動費は増えるが、固定費は変わらない。
ということは、生産量が増えるに従って、生産物1個あたりの費用は、変動費は変わらないが、固定費はだんだん少額になっていく。そのため製造にかかる費用は生産量の増大とともに減額されていくのだ。これを「規模の経済性」と呼ぶ。
なお、たくさん作れば作るほど、経験が積み重なり、そこで働く人のワザも磨かれ、作る時間が短くなったり、失敗が少なくなったりするので、だんだん1個あたりにかかる費用も減っていく。これを「経験効果」と呼ぶ。
ところで、「規模の経済性」は製造現場だけでなく家電販売店でもその原理が働く。
つまり、販売店が大きいほど、価格は安く設定できるのである。
ヤマダ電機やビックカメラでは、大量に家電製品を仕入れる力を持っているので、製造メーカーにとっては、たくさん受注できるので一個あたりにかかる経費を安く抑えることができる。だから、安く仕入れて、安く売ることができるのだ。
企業がものを売るとき次のような作戦をとる。
「高くても買う客はできるだけ高く売り、安くないと買わない客には安く売る」
もちろん、同時に高いものと安いものを売るわけにはいかないので、企業はいろいろ工夫する。誰もが思いつくのは時間差攻撃だ。
「ハリー・ポッターと賢者の石」のDVDは
2002年 5月に、3,129円で売りに出された。
2003年11月には1,575円になり、
2006年 4月には 980円にまで値が下がったという。
なお、消費者はいくらなら買うか?という予想も企業は大切にする。
たとえばDVDを売りに出すとき、1万円でも買う人は何%、4000円なら買う人は何%・・・・・500円なら買ってもいいと思う人何%というように区分する。そして、価格ごとに予想購買者数をかけて、それらの総和が企業の予想売上額とする。
仮に最初から500円で販売したとしよう。
1万円でも買おうと思っていた人も500円で買ってしまうので、企業の実入りは少なくなる。
よくネットビジネスで、あと3日で値上げというようにあおって迷っている人に買わせようとする戦略があるが、上記の戦略からすると、値下げどころか値上げをしてしまったらほとんど売れなくなるような気がする。しばらくして、また安くするという方法をとっているのかもしれない。
ところで、車にしても、テレビ、デジカメ、DVD、パソコンでもそうだが、基本モデルにいろいろな付加価値をつけて、中位モデル、上位モデル、最上位モデルと価格を上げていき、いろいろな価格帯で売る戦略がよくみられる。
一般的に基本モデルを売ったときの利益率が一番低く、価格が高くなるほど利益率が高くなるそうだ。それでも消費者は、こだわり(付加価値)があれば高く買う傾向があるそうだ。実際、経済産業省の調査でそのように答えた消費者は76%にのぼったという。
企業にとってはいかに付加価値で消費者にアピールするかが重要な戦略となってくる。
スターバックスの飲み物で、Gサイズ(グランデ・・・480cc)とSサイズ(ショート・・・240cc)の価格差は、日替わりコーヒーであろうが、カフェラテであろうが、カフェモカであろうが、全種類、100円であることをご存じであろうか。
ライバルのターリーズコーヒーも同様にGサイズとSサイズの価格差は100円である。
Gサイズの量は、Sサイズの量の2倍。
単純に考えると、Sサイズ280円のコーヒーよりも、量が2倍なのに100円しか値段が高くないGサイズ(グランデ)を飲んだが方が得することになる。本書の題名の由来でもある。
ところで、お店側にとっては、グランデばかり注文されると損をこうむるかといえばそうでもなく、お店側にとってもグランデを注文された方が利益率は高いのである。
なぜなら、コーヒー豆の原価は直接、生産地の農家から買うとしたら1杯1、2円しかかからないのだ。それが海を渡り、保管され、焙煎され、お店に持ち込まれ、地価の高い土地のおしゃれな店で、ウエイトレスさんから注がれるまでに、どんどんコストが加算されてきて、280円で売られることになるのだ。
価格のうち、直接のモノやサービスにかかる支払い以外のコストを「取引コスト」という。
グランデも、ショートも取引コストはほとんど変わらない。一杯分のコーヒー豆は1,2円の世界だ。
ということは、グランデを注文される方が、お店にとっても利益が高いことになる。
まさに、お客とwin−winの関係が成り立つことになる。
100円ショップは楽しい。
え、こんなものが100円という驚きがある。
どうみても1000円以上に見えるものがあるのだ。
たまには、どうみても50円ぐらいしか価値がないようなものもある。
いろいろごちゃまぜになっているから楽しいのだろう。
実際、100円ショップで売られている商品の原価は、安いもので1円、高いものでは100円を超えるものだってあるのだそうだ。
安さの秘密もいろいろある。
第一に、日本より格段に労働賃金が安い国でつくられているものが多い。
第二に、日本で高級品を製造している工場でつくられるものもある。これは工場が稼働していない時期に機械を遊ばせるのはもったいないという考えから、技術力の高い職人に100円ショップの商品をつくらせることもあるのだそうだ。100円ショップで一見、高級に見えるのは、実はほんとうに高級であったりする。
第三に、一度に大量に商品を発注し、仕入れた商品は返品をしない完全買い取り制にしており、なおかつ現金払いのため、工場側にとっても売れ残りや不良手形のリスクを追わずに済み、その分、買い取り価格が少々安くても取引に応じるケースが多いそうだ。
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