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「欲望の仕掛け人」 1,600円
中村 うさぎ 日経BP社 2004年3月18日発刊
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「崖っぷちだよ、人生は!」、「壊れたおねえさんは、好きですか?」など、独特の感性で時代を切り取る中村うさぎは、本人も認めるとおり大消費者である。コピーライターの後、ジュニア向け小説「ゴクドーくん漫遊記」で大ベストセラーになるが、その印税でブランドショッピングにはしり、5年間で推定1億円のブランド品を買いあさり、滞納者にまで身を落とす。その大消費ぶりはとまらず、ホストクラブでホストに入れあげ1年間で1500万円つぎこみ、次はプチ整形にはまる。本人は、「己の欲望の正体に無自覚である」と認める。
「不況」だの「消費の冷え込み」などと言われるこの時代、ものは売れなくなった。商品はなんでもある。しかし、買いたいものはない。中村に言わせれば、消費者が無自覚に抱えている欲望を具現化してみせるのがビジネスパーソンの役目であるという。欲望は人間から消えてなくなることはない。それを目の前で具現化してくれるビジネスパーソンが少なくなった中で、中村うさぎをカモにできる数少ない「欲望の仕掛け人」13人を中村自身がインタビューして対談集としてまとめた、れっきとしたビジネス書である。
最初に紹介されるのは、ドン・キホーテ社長の安田隆夫氏である。ドン・キホーテのコンセプトは、コンビニと正反対の路線をいくということである。コンビニは、きれいに整理整頓されて、清潔で明るく、コンビニに行けば買いたいモノがすぐ見つかるという便利さがあるが、ドン・キホーテで買い物する人は「商品を見つけにくい」と感じるし、まして「開いててよかった」などと便利感を味わうことはないのである。ドン・キホーテでは時間を消費することに重きを置いているという。夜中にカップルがきて、雑然とした店内を楽しむことができる。広い店内だのに、東南アジアの夜店を思い起こすような猥雑さが漂い、ブランド品の隣に大人のおもちゃが堂々と置いてあったり、目的のものが見つかるまでに、いろいろなところに消費者の目がいき、アジア人が根底にもつDNAを呼び起こし、いろいろなものを衝動買いさせる効果があるという。ドン・キホーテ社長の販売戦略が中村うさぎの絶妙な話術で引き出され、読み物としてもマーケティングの専門書としても十分に通用する一冊である。
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パークハイアット東京総支配人マルコム・トンプソンは、ホテルスタッフの心構えとして、いつもお客が特別の気持ちになってくれることを考えていなければならないという。そのためには、お客がどういうニーズを持っているか先読みできるようになるまで、感性を磨く必要があり、願わくば、お客に気がつかれることなく、お客のニーズを先読みし、ジャストフィットのサービスを提供することができるようになるまで、自らスキルを高めなければならないという。
中村うさぎによると、パークハイアット東京のスイートに泊まることが、東京の20代後半から30代のカップルのステータスになっているという。総支配人は、パークハイアット東京が静粛で神聖な場所のイメージが出せるように心がけているそうだ。インテリアデザインも神聖さに配慮し、エレベータに張り紙をしたり、部屋にお知らせを置いたりして、雰囲気を壊さないように気を配っている。お客のプライベートライフを現実感でこわしたくないからだという。
「この、ホテルによく来るが、本当に好きな理由は、家に帰るような気持ちになるからだ」と外国人の客に言われるそうだ。お客が泊まれば泊まるほど、客情報がホテル側に集まる。好みの煙草、チョコレート、飲み物、そういった情報をモザイク画を埋めるように完成させていき、お客がホテルを利用するごとに、心地よいサービスが受けられる度合いが増える仕組みになっている。お客情報のモザイクが完成すると、お客は本当に「母の家」に帰ってきたような安心感に包まれてプライベートライフを過ごすことができるようになるそうだ。
吉本興業代表取締役社長の林裕章は、99年に社長の座に就いた後は、吉本をスポーツや音楽の世界にも発展させ、ジャニーズ顔負けの若手タレントまで輩出するなど、着々と市場を広げている。しかし、吉本がどのように多角経営に手を染めようとも、他社とは一線を画する「強み」が吉本にはある。社長に言わせると、それは大阪のあくどさであるという。大阪で舞台経験を積めば、その後テレビ界に進出しても、大阪のあくどさが染みついているので、東京のライバルに負けることはないという。神戸でも名古屋でもない。大阪でなければならない。大阪弁を捨てなかったことが全国、特に関東で吉本がブレイクした勝因の一つだと考えている。その吉本も80年に東京に進出したときは、ドリフやコント55号の全盛時代で、大阪弁を東京に人はまったく受け付けなかった。そのうち、東京の芸人は元気がなくなり、『ザ・ベストテン』など歌番組にとってかわることになる。そのようななか、フジテレビで始まった『オレたちひょうきん族』に、紳助やさんまが出て、ようやく大阪弁が日の目をみる。今では、大阪弁が「強み」となっている。関東弁はイエス、ノーがはっきりしているが、関西弁は曖昧、いい加減で、その当たりが笑いに適しているという。
「考えときまっさ」・・・ええかげんな返事で、イエスともノーとも言ってない。
「おまえ好っきやで」・・「何言うてるの」とはねられても、「ちゃうねん、ちゃうねん」で角が立たない。
これらの優しさがお笑いに向いているという。
最近は、吉本もジャニーズとかぶってきている。お笑いだけでなく、踊りや歌もある。逆にジャニーズもSMAPのようにバラエティやお笑いをやる。一億総タレント化と呼ばれる現代にあって、テレビをつければ、全国各地から素人(しろうと)が集められ、いろいろなお笑いがタダで垂れ流しされている。しかし、吉本の芸人が他の素人や関東の芸人と一線を画すのは、大阪の舞台を経験してきているからだという。つまり、その舞台には笑いに目が肥えて、しかも自身が面白い大阪人がお金を払って見に来ている。そういう厳しい舞台経験を積んでこそ、一人前の芸人になれるからである。
バルス代表取締役社長の高島郁夫氏は女性たちが自分らしさを見つけることができるインテリア雑貨や家具を提供することを自分に与えられた使命と考えている。高島氏はお台場には4000人ぐらいの働く女性がいると見込んで、天王洲アイルにフランフランを出店。もともと家具屋をやりたかったらしいが、家具屋にお客が訪れるのは一生に3度、結婚、新築、子どもが親から離れて入学するときぐらいなので、家具だけでなく、雑貨を置いて、日常的に来店してもらいたいと考えた。、癒し系ブームなので、入浴剤やアロマ系は欠かさないようにしている。あとはわけがわからないものを置いていると言う高島氏は悪びれる様子もない。中村うさぎは、フランフランで売っていたゴムでできたヨーヨーのようなものが気になっていて、それが電機製品のコード巻きであることを知って驚いたという話をする。家でコードがゴロゴロしているのがいやで、みんな買っていくのかと高島氏に尋ねると、そうではなくて、女性客は、「なに、これ!」と面白がり、コード巻きとして家で使う、使わないは関係なく、アクセサリーとして買って帰るそうだ。高島氏は必要に迫られて買うようなものは、うちには置いていないと、あっさりと断言する。女性は隠れラブリタンの素質をみな持っている。昼はアルマーニのスーツでびしっと決めても、夜の自分の部屋はフランフランで買ったラブリーな小物で満たしていたいという気持ちを抱く人が多いそうだ。フランフランもドン・キホーテと同じように、お客に飽きられないための頻繁な模様替えは欠かさない。
海洋堂代表取締役宮脇修氏は、大人のコレクター魂に火を付け、食玩ブームを巻き起こした張本人である。グリコのおまけのお客さんは、なんと45%が主婦であるそうだ。子どもはほとんど買わない。40代を中心に、30代、50代、特に女性が買っていくという。家庭の主婦はコレクションするだけのお金や心の余裕もなかなか持てない。ところが、200円のグリコでコレクションする楽しみを手に入れることができた。宮脇氏からグリコのおまけの一つである小さなミシンを差し出された中村うさぎは、「うわー、かわいい」と歓声を上げる。これらのフィギュアは、本物そっくりの縮尺版ではなく、ミシンならミシンらしさを強調するようにデフォルメされている。つまり、人々が、「ミシン」に対して何を求めるのかという点をしっかり見抜き、フィギュアでそれを再現しているのである。宮脇氏は、他のライバル各社が似たようなおまけ作戦に出ても少しも恐くないという。それは、宮脇氏と海洋堂に勤める作り手達が「おまけ」に対して強い思いれがあって、その思い入れがうまく作品にデフォルメされ、他に追随を許さないものに仕上がっているからだ。
その思い入れのほどが尋常でない。作り手に「女の子」ばかりつくっている40歳の男性がいる。彼は女の子とつき合ったこともない。つき合ったり、セックスをすることでイメージが壊れることを恐れているからだ。脳内で女の子をつくっている。海洋堂が開くフィギュアの作品展において、彼がつくった作品は、2時間で約3000万円の売上をはじき出すそうだ。
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目次
安売りの仕掛け人! 安田 隆夫 ドン・キホーテ社長 欲望の格闘議場では、屁理屈より反射神経で勝負ですよ
高級ホテルの仕掛け人! マルコム・トンプソン パークハイアット東京総支配人 「ホテルらしからぬ」パークハイアットでは、一人ひとりが「特別」な賓客
美容整形の仕掛け人! 高梨 真教 タカナシクリニック院長 顔の全面改装を求める人は、アイデンティティが崩壊してるんですよ
お笑いの仕掛け人! 林 裕章 吉本興業代表取締役社長 「笑い」は時代で変化する。どの芸人が売れるか、僕もわかりません
おしゃれインテリアの仕掛け人! 高島 郁夫 バルス(フランフラン)代表取締役社長 小売りで成功する極意は、「気持ちの良い夢」を与えることにある
フィギュアの仕掛け人! 宮脇 修 海洋堂代表取締役社長・ホビー館館長 愚直なまでの作家達の思い入れがあって、初めてフィギュアはアートになるんです
レストランの仕掛け人! 長谷川 耕造 グローバルダイニング代表取締役社長・CEO 成功したいと思ってやるとだめなんですよ。過程を楽しむセンスがないと
コスメの仕掛け人! 中根 孝 ボビイ
ブラウン プロフェッショナル コスメティックス
事業部長 先立つものがないと、結構、知恵って出てくるもなんです
ティーンズ・アパレルの仕掛け人! 成宮 雄三 ナルミヤ・インターナショナル代表取締役社長 少子化だと騒がれるほど、ライバルが減ってありがたい
保険の仕掛け人! 上田 昌孝 アメリカンホーム保険会社会長兼CEO あらゆるところに市場があり、市場あるところに必ず保険もある
下着の仕掛け人! 野口 美佳 ピーチ・ジョン代表取締役社長 男性が考える「生産管理」感覚では、女性たちの欲望に応えきれない
高級中華の仕掛け人! 野坂 裕彦 福臨門酒家東京地区総支配人 会話の中で最上のメニューを組み立てる、それがお客さまとの理想の関係
旅館女将界の仕掛け人! 三宅美佐子 銀花女将 この世界は、唯一、女性のほうが格段に能力が優れていると思うんです。
あとがき
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